2026/03/16 CIO View Quarterly 新着

乱気流の中でも巡航高度に到達

中立的な金融政策と支援的な財政政策に支えられた堅調な経済成長が、資本市場を下支えしています。さまざまなリスクが存在するため、 私たちは分散投資を重要視しています。

2026年3月号

この記事は約4分で読めます。

“多くのリスクはあるものの、景気サイクルが維持される限り、今年はほとんどの資産クラスが引き続き堅調に推移するでしょう。“

Vincenzo Vedda

ヴィンチェンツォ・ヴェッダ

現在、世界全体には多くのリスクが存在していますが、私たちは依然として楽観的であり、今後12か月で大多数の資産クラスが堅調なリターンを示すと予想しています。また、イランへの攻撃がより大規模な紛争へと拡大し、長期的に原油価格が1バレル90米ドル以上に押し上げられるような事態にはならないと見込んでいます。AIブームについても前向きに評価していますが、一方でAIの潜在的影響が良くも悪くも想定外になりうることは、年初に再び示されました。新技術に対する懸念が、高いレベルのセクターローテーション(2007/08年の世界金融危機以来最大)を引き起こしたためです [1]

実際、AI に伴う不確実性を踏まえ、私たちは米国市場よりも、テクノロジー依存度の低い欧州市場や日本市場の株式をより好ましいと考えています。特に、より広い地理的分散を求める機関投資家の増加を見込んでいることから、これら市場の米国に対するバリュエーション・ディスカウントは、現在の水準から縮小するとみています[2]

2026年と2027年に、いわゆる典型的な世界景気拡大が起こるとは想定していませんが、経済成長によって資本市場には十分に堅固な基盤が提供されると考えています。また、インフレについても過度に懸念していません。欧州では、インフレ率は2026年には年間平均で2%まで低下するとみられ、米国が同水準に達するのは2027年になると予想しています。そのため、現在の政策金利は米国の方が欧州より高く、米連邦準備制度理事会(FRB)は2027年3月までにさらに2回の利下げを行うと見込んでいます。一方で、欧州中央銀行(ECB)は現行水準を維持する可能性が高いとみています。日本銀行はこれとは大きく異なる 方向にあります。金融政策の「正常化」を目指す動きの中で、追加の利上げが2回行われる可能性があります。

成長・インフレ・政策金利が「高すぎず低すぎず」という、このいわゆるゴルディロックス(適温)シナリオの環境では、利上げによる価格下落の可能性が小さいため、株式も債券も良好なパフォーマンスを示し得ます。債券の多くのカテゴリーでは方向感に乏しい展開を予想しています。社債は信用スプレッドが非常に低いにもかかわらず、支援的なマクロ環境や高い需要を背景に、依然として魅力的であると考えています。ただし、より銘柄固有のリスクが大きいハイイールド債については、選別的なアプローチを重視しています。

一方で、株式市場は経済成長や適度な金利水準の恩恵を受けているように見えます。米国10年国債利回りが4.5%を大きく超えて定着するリスクは極めて低いとみており、向こう12か月の見通しでは約4.0%を予想しています。しかし、株式市場を支えている最大の要因は何よりも企業利益です。私たちは力強い利益成長を予想しており、先進国では6〜12%、新興国では最大20%の増益を見込んでいます。最近では株式市場の強さがより広範に及ぶようになり、もはやテクノロジーセクター単独に依存する状況ではありません。景気サイクルが維持される限り、株式市場のポジティブなモメンタムは続くと考えています。ただし、AIに対する不安や地政学的・軍事的衝突の影響によって、調整局面が生じる可能性は依然として高い点には注意が必要です。

地政学的リスクは株式市場の重荷となり得ますが、一方で金と原油には追い風となる可能性があります。しかし原油については、構造的な供給過剰が続くとみており、需要増加によるその過剰分の吸収は、年内を通じて徐々に進むと予想しています。また、世界の1日当たり原油需要の約5分の1が通過するホルムズ海峡が閉ざされないことが、2027年3月時点での1バレル=66米ドルという私たちの原油価格見通しの前提となっています。とはいえ、イランが同海峡を長期間封鎖するリスク、あるいは乗員や貨物の安全を懸念して船舶が自主的に航行を避けるリスクは確かに存在します。また、私たちの見解では、米ドルは安全資産としての地位を一部失いつつあり[3]、時間とともに弱含む可能性が高いと考えています。

私たちはAI、国家の債務持続可能性、地政学の3つを主要リスクとして見ています。AIについては、上振れ・下振れの両方のリスクがあると考えています。国家の債務持続可能性は、いつ問題化してもおかしくないテーマですが、実際にそれがいつ起きるかを予測することは不可能です。地政学に関しては、一般的に、政治が市場に持続的な影響を与えるのは、その結果が企業の利益に反映されたときのみというのが経験則です。私たちの基本シナリオは、今後12か月について依然としてポジティブです。企業利益の増加と緩和的な金融政策が、市場を引き続き支えると見込んでいるためです。

投資関連情報

1. 「マーケット・ブリーフ:AIが既存のディスラプターを再編することで起きた2026年の大規模セクターローテーション」 2026年2月9日時点のMorningstarより。

2. 「グローバル投資家インサイト調査 2025」 2025年7月時点のSchrodersより。

3. 金融における「安全資産」とは、市場の混乱時に価値を維持、または上昇すると期待される投資対象や資産のことを指します。

■当サイトは、情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものではありません。当サイトは、信頼できる情報をもとにドイチェ・アセット・マネジメント株式会社が作成しておりますが、正確性・完全性について当社が責任を負うものではありません。当サイト記載の情報は、作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況によって予告なく変更することがあります。

CIO View