2024/04/02 CIO View Quarterly New

AI が解決するはず

景気は後退しておらず、インフレ率は低下しており、最初の利下げが実施されそうです。これは、特に債券投資をはじめとした資本市場への投資全般に好ましい環境です。また、人工知能(AI)銘柄 が今後株式市場を下支えするようになるでしょう。

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“引き締め的な金融政策はインフレ率の低下という目的を概ね達成しました。よって、我々は今年中に利下げが開始されると予測しています。しかし、今後の金利の方向性は完全に定まったわけではありません。経済成長やインフレの見通しが依然として不透明なためです“

Björn Jesch

グローバル・チーフ・インベストメント・オフィサー

今四半期のDWSによる今後12カ月の最新の見通しは、作成前に特に活発な議論が交わされました。株式市場のリターン見通しの根拠は全体的に良好なマクロ経済環境です。この数十年で最も急速な利上げサイクルを経て、利上げの目的はほぼ果たされつつあります。我々が予測する2024年の平均インフレ率は米国で2.8%、ユーロ圏で2.5%と、インフレ率は低下しつつあります。しかも、経済成長の見通しは米国で1.8%、ユーロ圏で0.7%と、完全に経済成長が止まったわけでもありません。米国の一部地銀を除いて、利上げに伴う損害は今のところ限定的です。

しかし、特に米国においてこれから事態は悪化し得るでしょうか。利上げの影響は既に経済のあらゆる部分に行き渡ったと本当に言えるでしょうか。主要経済指標は依然として景気の鈍化をしているのではないか(我々も2025年の米国の経済成長率は1.6%に低下すると予測しています)。 もっと根本的な部分を問うと、米国が記録的な財政赤字の借りを返さざるを得なくなるのはいつでしょうか。米国の財政赤字は国内総生産(GDP)比で、2023年には6.5%でしたが、2024年と2025年には8%になると試算されており、その大部分は米国以外の国によって賄われています(2023年の貿易赤字はGDP比3%を超えています)。非常に拡張的な米国の財政政策も、次のインフレの波につながる可能性があります。こういった要因からさまざまなリスクが生まれます。一方で、生産性の向上によって楽観的な見方が生まれる可能性もあります。人工知能(AI)によって収益性が高まり、インフレ圧力が低下することも考えられますが、AIが経済全体にこれほどの影響を及ぼすようになると現時点で考えるには時期尚早なようです。

しかし、株式市場は夢のある話を好みます。現時点で、いわゆるマグニフィセント・セブンのテクノロジー企業への集中が進んでいる米国株式市場は大きな夢です。株式市場の熱狂によってこのところ経済も若干下支えされています。新型コロナの期間中に積みあがった貯蓄が使い果たされてしまった今となっては、株価上昇を受けたプラスの資産効果は、消費の減退を回避し、家計の支出を続かせる処方箋そのものです。しかし市場全体を見ると今年の収益成長率はわずかで、来年も若干増加する程度だと我々は見ています。それでもなお我々は目標株価をおよそ10%引き上げます。株式の、特に米国株式について、リスクプレミアムが次の3つの理由から低下したためです。1点目として、我々は景気後退の可能性が急激に低下したと見ています。2点目に、株価指数は景気動向に左右されにくくなっています。背景として、株式市場に占めるテクノロジー関連企業の割合はさらに高まっていますが、こういった企業では継続的に得られる収益源も増加しています。よって、IT投資の役割が高まっていることも相まって、企業収益があまり景気に連動しなくなっています。3点目はAIの潜在性に関する暗黙の選択肢です。

このような状況で、我々は通信サービスと一般消費財のセクターを選好します。地域としては、我々は欧州の特に銀行セクターに巻き返し余地があると見ています。日本とインドについてもポジティブです。しかし、経済成長の鈍化により資本市場が困難に直面している中国の影響で、アジア全体には依然として大きな足かせが存在しています。

一般的に債券は株式よりもボラティリティが低いと考えられていますが、足元では債券のボラティリティも高まっています。わずか6カ月未満の間に、2024年6月末までのフェデラルファンド金利の利下げ回数の市場予測は1回から3回になり、そして1回に戻りました。コアインフレ率の低下がなかなか進まずやっと4%を下回ったところであることから、我々は2025年3月までの利下げは米国でわずか3回、ユーロ圏では4回になると予測しています。

つまり、全体的に見ると我々の見通しは債券に有利であると言えます。我々は国債については短期年限を選好し、社債についてはリスク調整ベースで、ハイ・イールド債券よりも米国と欧州の投資適格債券を選好します。また、我々はアジア債券にも良好な収益機会があると見ています。オルタナティブ投資のセクターでは、引き続き金に対してポジティブです。

金は金利環境が安定に向かっていることと、中央銀行やアジアの個人投資家からの需要が引き続き高いことから恩恵を受けています。不動産に関して、2024年は非常に有望な参入ポイントになると我々は考えています。不動産価格は概ね下げ止まったようですが、当初はボトムアウトの期間が長引く可能性もあります。中期的には健全な需要があることと、とりわけ足元での供給が非常に少ないことが、価格上昇の根拠となるでしょう。我々は引き続き物流不動産と住宅不動産を選好します。当面の間債券利回りが上昇しない見通しであることと、価格調整が概ね終わった可能性が高いことから、インフラ不動産も恩恵を受けるでしょう。我々はグリーンエネルギー、デジタル化、輸送のセグメントの特定のプロジェクトを選好します。

まとめると、中央銀行が目指していたインフレ率の低下がまさに起きつつあることを我々は強調したいと思います。しかし、市場の現在の楽観は今後2年間の冴えない経済性成長見通しと対照的で、企業の収益性も既に非常に高水準に達しており、今後さらに高まる余地はほとんどないでしょう。

とはいうものの、過去わずか6カ月で示されたように、株式はテクノロジーの波に乗っていく上で最良の手段であると我々は見ています。同時に、特定のオルタナティブ投資とともに債券もこのところ適度なリターンを生むようになっています。つまり、投資家は現時点で幅広いオプションから選択できるということです。

原題:AI must fix it

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