2023/06/23 CIO View Quarterly

経済成長は控えめで不確実性は高いが、リターンはまずまず

今後12ヶ月間の見通しでは、経済成長の鈍化とインフレ率の上昇にもかかわらず、多くの資産クラスで それなりのリターンを見込んでいます。

2023年6月号

経済成長は控えめで不確実性は高いが、リターンはまずまず

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“今後1年間は、投資家にとって悪い状況にはならないでしょう。いくつかの資産クラスにおいて、緩やかながらプラスの実質リターンが期待できます。しかし、これまでにあまり経験したことのない経済環境の中で、上昇と下落双方のサプライズが生じる余地が通常以上に大きいと思います。“

Björn Jesch

グローバル・チーフ・インベストメント・オフィサー

見通しはバラ色でも暗くもなく、刺激の乏しい横ばいの動きとなりそうです。これをポジティブに捉えるかネガティブに捉えるかは、期待値によって異なります。ポジティブな面は、欧米の景気後退が緩やかなものになりそうだということです。ただし、その後の回復については、あまりポジティブではなく、緩やかなものになると思われます。世界全体では、今年は2.8%、来年は3.0%の成長を見込んでいます。ユーロ圏、米国、日本については、2024年の成長率が1%を下回る可能性が高く、かなり低調な数字になると思われます。

私たちは2015年から2020年にかけても、同じような経済の停滞が続くと予測していました。当時は「タートル・サイクル」(非常に緩やかな景気回復)と呼んでいましたが、タートルであることが投資家にとって魅力的でないということでもありませんでした。過熱のリスクはなく、低金利でほとんどの資産クラスに恩恵があったからです。しかし、今日の状況はまったく異なっています。米国のインフレ率は2023年に4.3%、2024年に 2.5%、同期間にユーロ圏では5.7%、2.5%に低下するとみていますが[1]、2024年も中央銀行の目標である2%を上回るインフレ率が続くことになれば、中央銀行は市場、あるいは経済を かつてのように手厚く支援することができないでしょう。もうひとつの違いは、中央銀行と投資家が、高インフレと高金利に悩まされながらも、主に労働市場が異常に強く、かつ緩やかに冷え込みつつある現在の経済環境の経験が不足していることです。

したがって、インフレを嫌う債券市場が株式市場よりもはるかに神経質になっているのは当然です[2]。来年の債券利回りの方向性については、意見が大きく分かれています。この先12ヵ月はインフレ懸念と成長懸念のどちらが優勢になるのでしょうか?欧米経済は今後1、2年の間、大きなダメージを受けることなく、切り抜けることができるのでしょうか?

また、こうした点における前提次第で、イールドカーブのスティープ化、フラット化どちらを見込むかが決まります。当社では、マクロ経済見通しに基づき、逆イールド化が終わるとともに、長期ゾーンの金利が上昇するとみています。したがって、より年限の短い国債が引き続き魅力的であると考えています。社債については、欧州で6%、米国で7.5%の利回りが期待できるハイイールド債が最も魅力的であると思われますが、信用力の高さから欧州の方を選好しています。

このような状況は、株価を予想するうえでのジレンマも浮き彫りにしています。当社では、今後12ヵ月間で一桁台半ばのリターンを見込んでいますが、これは主に配当からもたらされるものです。低調な経済成長、相対的に高い債券利回り、依然として相対的に高い利益率、そして相対的に高いバリュエーション等を鑑みると、株価の上昇余地は限られると考えています。一方で、株式は高インフレ環境に適している資産であることが改めて示されました。

さらに、足元で人工知能関連が賑わっているように、株式投資を通じてイノベーションを共有することもできます。株式の中では、引き続きキャッチアップの余地があり優れたニッチプレーヤーも存在する欧州の中小型や、グローバルの通信セクターを選好しています。

当社では、今後12ヵ月間の緩やかな需要の増加を満たすのに十分な石油が供給されると見込んでおり、ブレント原油価格は1バレル85米ドルまでしか上昇しないとみています。

金は、地政学的緊張、金利のピークが近いこと、中央銀行のさらなる買い入れから引き続き恩恵を受けることが期待され、1オンス2,200米ドルをターゲットとしています。

当社の全体的な見通しは、そこまで楽観的なものではありませ ん。しかし、投資家の皆さんは、プラスのリターンが期待できるいくつかの資産クラスの中から経済やマーケットシナリオに応じた選択をすることができると考えています。

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1. 2022年のインフレ率は米国、欧州ともに8%超

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