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2016年12月15日

米国務長官にティラーソン氏が指名される

トランプ次期米大統領は2016年12月13日、次期国務長官に米石油大手エクソンモービル社のレックス・ティラーソン会長兼最高経営責任者(CEO)を指名すると正式発表した。トランプ氏は声明の中でティラーソン氏について「世界の指導者との関係で右に出る者はなく、国務長官を務めるのに彼ほど覚悟があり、献身的な人物は思い浮かばない」と述べた。ただ、政治・外交経験のない人物を外交トップに起用するのは異例のことである。なお、ティラーソン氏自身は「我々は同盟関係を強化し、国益を追求するとともに、米国の強さと安全、主権を高めることに集中しなければならない」と抱負を述べた。

ティラーソン氏はロシアのプーチン大統領と長く親交があることで知られる。ティラーソン氏は1990年代にエクソンのロシアでの事業基盤確立に尽力、同社が大型プロジェクトを進めるサハリンで1999年当時は首相であったプーチン氏と初めて会談した。2011年にはプーチン首相(当時)の立ち会いの下、エクソンモービル社はロシア国営石油会社ロスネフチと北極海と黒海のロシア領海にある大陸棚を共同で開発することで合意した。2013年にはロシア政府はティラーソン氏に対し、ロシアで外国人が受ける最高級の栄誉とされる「友好勲章」*を授与している。

ティラーソン氏はエクソンモービル社のCEOとして対ロシア制裁に反対を表明してきた。欧米諸国による経済制裁により同社の北極海掘削プロジェクトを休止するよう圧力がかかったが法的拘束力はなく、実際にはエクソンモービル社はロシアでの権益を2013年末の1,140万エーカーから2014年には6,370万エーカーにまで拡大したことが同社の米規制当局への報告書で確認されている。

また、トランプ次期米大統領は、エネルギー省長官にリック・ペリー前テキサス州知事の起用を決めたとも報じられている。ペリー氏は石油産業が盛んなテキサス州の知事を2000年~2015年にわたり務めた人物である。これまで、石油業界の規制緩和を主張し、気候変動にも懐疑的な立場を取っている。なお、同氏の起用は、トランプ次期政権が化石燃料業界寄りであることをあらためて示唆している。

これでトランプ次期政権の主要閣僚候補が出そろったことになるが、実際に就任するには上院の承認が必要となる。現在、共和党の有力議員がティラーソン氏とプーチン大統領とのつながりを問題視する等、手続きの難航が予想される。なお、ティラーソン氏の国務長官指名を受け、プーチン大統領からの信任が最も厚い外交顧問の1人であるウシャコフ大統領補佐官(外交担当)はモスクワで記者団に対し、「(ティラーソン氏は)自身の分野で非常に素晴らしいプロフェッショナルだ。ロシア当局者に知己が多く、ビジネス分野での協調に積極的に関わってきた」と語った。

*ロシア連邦友好勲章:ロシア連邦が授与する勲章のひとつで、同国が外国の民間人に対して贈る最高の栄誉。民族間の友好・協力関係の強化への多大な貢献、ロシア経済・科学の発展への寄与、異民族間の文化を近づけ、国家間の平和・友好関係の構築に対して贈られる。1994年ロシア連邦大統領令No.442により制定され、勲章そのものは星の形をしており、中央に地球が描かれ「平和と友好」の文字が刻まれている。過去の受賞者は、アンジェイ・ワイダ氏(ポーランド/映画監督)、リー・クァンユー氏(シンガポール初代首相)、ネルソン・マンデラ氏(南アフリカ大統領・ノーベル平和賞受賞者)、山下泰裕氏(全日本柔道連盟副会長)、長塚英雄氏(ロシア文化フェスティバル日本組織委員会事務局長)等。

インベロ アドバイザーズ株式会社 代表取締役 アブジケエフ・タメルラン

執筆者のご紹介

 

インベロ アドバイザーズ株式会社
代表取締役 アブジケエフ・タメルラン

現ロシア連邦モスクワ州立大学卒業。米ステート・ストリート銀行、PIMCO等、米大手金融機関のアジア、米国、欧州拠点において複数の業務に従事した後、2010年に東京にて投資戦略コンサルタント業務を手がけるインべロアドバイザーズ株式会社を設立。また、同年には、サン・インベストメント・合同会社へもパートナーとして参加し、プライベート・エクィティ業務に従事し、現在に至る。 英オックスフォード大学にて、国際関係学修士課程修了。

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