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2016年12月6日

改訂ロシアマクロ予測:安定性のために成長率を引き下げ、
引き締めへ

ロシア経済開発省(MED)は、9月に内閣に提出した当初の予測を大幅に修正しなければならなかった。原油価格40米ドル/bblの基本シナリオでは、2017年のGDP成長率は当初の0.6%から0.2%に、2018年は1.2%から0.9%に、また2019年は2.1%から1.7%にそれぞれ下方修正された。

このようなマクロ経済予測の大幅な修正は、財政支出を2017年は対GDP比で18.7%、2019年は同16.1 %へ縮小するという政府の決定に起因している。その他の理由として、MEDがロシア中央銀行(CBR)と同じ4%のインフレ目標を設定するよう政府から要求されたことがある。前回のMED予測では、この水準は2019年に達成され、2017年のインフレ率は4.9%になると予想されていた。政府関係者は、インフレ目標を達成するためには、正しいインフレ期待を形成すべく、中央銀行と政府は同じ見通しを持つことが重要であると考えているようである。しかし、これは単にCBRの政策に対する信任の問題ではなく、政府予算上の利益の問題でもある。より低いインフレ目標を設定すれば、政府は年金により低い物価スライドを設定することが可能だからである。ただし、シルアノフ財務大臣は実際のインフレ率が予算に計上された水準を上回った場合には、物価スライドの水準を引き上げると約束している。

新しいMED予測において、来年のインフレ率低下の主な要因は、適度に緊縮的なCBRの政策、消費者需要の弱さ、ルーブルの安定であろう。一方、原油価格の下落はルーブル安と財政赤字の拡大をもたらし物価上昇を招くことから、重大なインフレ上昇リスクと考えられる。

通貨の予想も、ロシア財務省(MinFin)の強い圧力によりルーブル安方向に修正された。 2017年、2018年、2019年の米ドル/ルーブル平均はそれぞれ67.5、68.7、71.1 と予想されている。 前回では、2017年~2019年に65.5、 65.0 、64.4とルーブル高の進行が明確に予想されていた。資本流出に関しても、2016年の180億米ドルから2019年末には250億米ドルに拡大すると予想されている。伝統的に、MinFinはマクロ経済予測において歳入の減少に繋がるルーブル高を主張していた。歳出がより少なくなれば、貯蓄を可能にするからである。しかし、状況は変わり、今後3年間の歳出はすでに確定しており、財政赤字の設定目標は、2017年に3%、2018年に2.2%、2019年に1.2%と設定されている。これを達成するためにはルーブル安となることが必要かもしれない。 MinFinの見積もりによると、原油価格が40米ドル/bbl、為替レートが1米ドル69.4ルーブルという前提の下、1ルーブルの米ドル高・ルーブル安は2017年に600億ルーブルの追加予算をもたらすと見られている。

新しい予測においてほとんどの主要指標は下方修正された。投資額の増加率は2017年に0.3%から-0.5%に、2018年は1.2%、2019年は2%にそれぞれ下方修正された(2018年~2019年の前回予測は2.2%、3%)。マクロ経済指標の弱さの理由の一つとして、MEDは累積年金資産からの投資が凍結されたことを挙げている。2018年から2019年にかけて投資額の平均増加率は1.6%とされているが、これを達成するには公共投資が減少するなかで、民間部門への投資を増やすことができるかにかかっている。

実質賃金については、2016年は5.6%の低下、その後3年間は年1%以下の緩やかな上昇が見込まれている。しかし、MEDは人々が貯蓄志向をゆるめ、特に消費者金融や小売業の回復に繋がると予想している。

今回の予測の改訂は、2018年の大統領選挙に向けてロシアのエリートの間で、統制と将来の発展パターンを決定するための政治的な戦いが継続していることを示している。改訂された新しい数値は、予算引き締めの慎重なアプローチが「成長」モデルよりも勝っていることを示している。来年のマクロ計画の主な論点は、いくつかのまれな例外を除いて、予算支出の凍結である。全般的かつ唯一のドライバーは、2017年に6%、2018年に9%、2019年に11%削減される経費である。しかし、こうした引き締め状況の下でさえ、財政赤字を賄うためには安定化基金の活用、海外債券発行、国有資産の民営化等を回避することは不可能であろう。

継続的な引き締めは、構造改革の遅れやゼロ近辺の成長モデルという点で多くの批判を受けるであろう。一方で、現在の変動の激しいグローバル環境において国のバランスシートの慎重な管理は、マクロ状況の安定性と予測可能性の大部分で短中期的には一定の恩恵をもたらすことも間違いないであろう。

インベロ アドバイザーズ株式会社 代表取締役 アブジケエフ・タメルラン

執筆者のご紹介

 

インベロ アドバイザーズ株式会社
代表取締役 アブジケエフ・タメルラン

現ロシア連邦モスクワ州立大学卒業。米ステート・ストリート銀行、PIMCO等、米大手金融機関のアジア、米国、欧州拠点において複数の業務に従事した後、2010年に東京にて投資戦略コンサルタント業務を手がけるインべロアドバイザーズ株式会社を設立。また、同年には、サン・インベストメント・合同会社へもパートナーとして参加し、プライベート・エクィティ業務に従事し、現在に至る。 英オックスフォード大学にて、国際関係学修士課程修了。
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