~ポートフォリオ・マネジャーに聞く~ロシアの投資環境

ドイチェ・アセット・マネジメント
運用部 ポートフォリオ・マネジャー


松本 卓也

Q1

ロシアの経済や財政状況について教えてください。

松本

ロシア経済は、2014年後半の原油価格急落や欧米諸国からの経済制裁を背景に、2015年、2016年とマイナス成長を経験した後、2017年にはプラス成長に転じ、足元も緩やかな成長が続いています。2014年末以降通貨安を通じたインフレの急上昇により、ロシア中銀はインフレ抑制のための利上げを余儀なくされ、経済は冷え込んだ状態が続きました。しかしながら、その後のインフレの低下と、中銀の断続的な利下げから、生産や内需が回復し、加えて原油高も追い風となり、経済は回復傾向となりました。

インフレの低下や、最低賃金の引き上げなどから、2018年も個人消費が経済を牽引すると見られています。大手格付け会社S&Pグローバル・レーティング(以下、「S&P」)は2月、原油価格が低迷する環境下でもロシア経済が順応している点などを評価し、約3年ぶりにロシアの外貨建て長期債格付を投資適格級に格上げしました。また、ロシアの政府債務残高(対GDP)の水準は世界的に見ても低く、柔軟な財政運営が可能にもかかわらず、財政規律を重視する慎重な姿勢を貫いていることや、原油価格の上ぶれによる税収増などから、財政の改善が期待されます。

Q2

3月のロシア大統領選挙でプーチン氏が再任されました。今後の米欧諸国との関係、ならびにグローバルな投資環境にとってどのような影響がありますか。

松本

プーチン氏の再任は概ね事前の予想通りであり、それ自体は市場への大きなインパクトは見られませんでした。次の任期満了である2024年まで、軍事力増強やインフラ投資及び医療水準向上への支出を約束していますが、5月にはメドベージェフ首相が再任されたこともあり、国内政治の方向性は大統領選前後で大きな変化はないと見ています。外交においては、ウクライナやシリア情勢、米国の大統領選干渉疑惑などで、諸外国と様々な問題を抱え、解決の糸口が見えていません。これら諸問題に関連したロシアの動きに合わせて、欧米からの制裁が決定されますが、経済制裁の内容次第では、投資家心理に影響するため、情勢の変化には留意が必要と考えています。

Q3

米国の経済制裁は今後、ロシアの経済成長にどのような影響を与えるでしょうか。

松本

米国は4月6日に、ロシアの政府関係者や大企業に対して、追加の経済制裁を決定しました。制裁対象となった企業の債券や株式などの取引を禁止したことなどが嫌気され、通貨ルーブルは下落しました。ロシア中銀は、通貨安を背景とした輸入物価上昇を通じてインフレ上昇が従来の予想より早まるとの見通しを示した一方で、中銀のインフレ目標値である4%程度に向かっていくとの見方は変えず、インフレの上ぶれ懸念は特段示しませんでした。ロシア経済は内需や原油価格上昇による輸出収益の拡大などがプラス成長に寄与していますが、4月に決定された制裁による内需や輸出に対する影響は限定的と見られ、経済全体には大きな影響がないと考えています。追加制裁を巡る不透明感は残るものの、今後更なる追加制裁がなければ、高インフレに見舞われるリスクは低く、経済は緩やかな成長路線をたどるという見方に変わりはありません。

Q4

米国で緩やかな利上げが実施されており、今後も段階的な利上げが見込まれています。ロシアへの影響はどのようなものが考えられますか。

松本

主要政策金利とインフレ率の推移米国の利上げにより新興国から資金が引き上げられれば、新興国市場全体への影響が懸念されます。ただし、ロシアは財政規律が強固で、政府債務残高(対GDP)の水準が小さく、且つ海外からの投資に過度に依存していない環境でもあるため、海外勢の資金引き上げという動きには相対的に影響を受けにくいと考えられます。加えて、外貨準備が潤沢であることも安心材料です。一時はルーブル安防衛のため通貨介入で急減した過去もありますが、足元は再び拡大傾向にあります。このような慎重な財政政策から、財政赤字は縮小する見込みで、原油高が税収増につながり、財政赤字の縮小の手助けになると考えています。

Q5

原油価格の今後の見通しについて教えてください。

松本

ロシア・ルーブル(対米ドル)とWTI原油先物価格の推移石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国が世界的な原油のだぶつき解消のため2017年から始めた協調減産により、供給過多の状況は一服しています。原油価格が切り上がっている中でも協調減産を続けていることや、世界的な好景気を背景とした強い需要から、需給は良好であると予想しています。ただし、原油価格が高い状況では、米国のシェールオイルの増産が予想され、上値を抑える可能性があるとみています。

Q6

最後に、投資家へのメッセージをお願いします。

松本

新興国は経済・財政状況で方向感にばらつきが見られる中、ロシアは投資適格級に格上げされたことで信用力が改善傾向にあり、また経済・財政が回復していることは注目できます。ムーディーズ・インベスターズ・サービスの格付は「Ba1」と投資適格級から1ノッチ低い水準の投機的等級となっていますが、景気回復や財政規律を重視した政策などから、格付見通しは「ポジティブ」で、今後投資適格級への格上げとなれば、投資家からの資金流入も期待できそうです。ロシアの高い利回りへの需要は世界的にみても強く、例えば、ロシア国債の非居住者保有率は2018年初時点で30%を超える水準にあります。欧米諸国との緊張感の高まりから海外投資家がロシア証券資産の投資を手控える可能性もありますが、こうしたマクロ経済状況に焦点が当たれば、ロシア市場は底堅い推移が見込めると考えています。

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