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2016年12月19日

■ ロシアの為替・債券市場の変動要因としては、
①原油価格
②インフレ率
③金融政策
④欧米諸国による経済制裁
⑤外貨準備
⑥格付動向
等が挙げられます。当レポートでは各要因について考察するとともに、今後の見通しについてご説明致します。

 <見通しまとめ>
通貨ルーブル:原油価格が以前に比べ緩やかに推移していることや、中銀が利下げに対し機動的、且つ慎重な姿勢を取っていること等を背景に、今後も比較的落ち着いた動きで推移すると予想。
ロシア債券市場:インフレ鈍化期待や緩やかな利下げ期待等が市場のプラス材料になると予想。

【主な変動要因】

①原油価格

ロシアの主要輸出品目である原油価格と通貨ルーブルの間には連動した動きが見られます。2014年後半以降、原油価格が急落したことを受けて、ロシア経済への悪影響が懸念され、ルーブルは急落しました。また、ロシア政府はロシア企業がエネルギーを輸出する際に税を課していますが、原油安による税収減が見込まれたことによって、ロシアの財政懸念が高まったこともロシア市場の下落要因となりました。

2015年も原油価格の下落基調がルーブルの下落要因となったものの、2016年に入りWTI原油先物は1バレルあたり40~50米ドル台で推移しており、ルーブルも概ね安定した推移が続いています。

原油価格については、2016年11月にOPEC(石油輸出国機構)が減産に合意すると共に、12月10日には約15年ぶりに非加盟国も協調減産に合意しました。今回のOPEC加盟・非加盟国の減産量は世界生産量の2%弱に当たることから、原油の需給改善が期待されます。

なお、今回の協調減産にはロシアも含まれていますが、ロシアは2016年の原油相場を1バレルあたり40米ドルと想定して政策運営を行っていることから、自国の生産量の減少よりも価格上昇効果を狙ったものとの見方もあります。

【図表】ルーブル(対米ドル)と原油価格の推移 (2009年12月31日~2016年12月16日、日次)

②インフレ率

2015年は、ロシアはルーブルの急落を受けて輸入物価の上昇によって大幅なインフレ率の上昇に悩まされ、これがロシア市場にとり重石となりました。

しかしながら、中央銀行による強力な金融引締策や、ルーブルが足元安定的に推移していること等を背景に輸入物価の上昇圧力が徐々に弱まったこと等から2016年に入りインフレ率が低下しており、債券にとって金利低下(価格は上昇)要因となっています。

【図表】ロシアのインフレ率の推移 (2000年12月~2016年11月、月次)

③金融政策

ロシアの中央銀行(以下、中銀)は2014年12月にインフレ抑制や通貨防衛のため、政策金利を17.0%まで引き上げましたが、経済への悪影響等を鑑み、2015年前半からは利下げを断続的に行い、2016年も緩やかなペースでの利下げを継続しています。

利下げを背景に債券市場では金利が低下したほか、2016年はインフレ鈍化を受けて市場で更なる利下げ期待が高まったことも債券市場にとりプラス材料となりました。また、急激な利下げは為替市場にマイナスの影響を及ぼす可能性もありますが、中銀はインフレ抑制のため適度な金融引締策を維持しつつ政策金利を決定しています。

【図表】ロシアの政策金利と ロシア国債指数(ルーブル建)の利回りの推移 (2013年12月31日~2016年12月16日、日次)

④欧米諸国による経済制裁

2014年にロシアがウクライナに侵攻したことを受け、欧米諸国がロシアの大手金融機関等の長期資金調達に対し制限を設ける等の経済制裁を実施し、企業の外貨資金調達が困難となりました。外貨建て債務の支払いに相応の外貨を準備するため、ロシア国内の企業はルーブル売り/外貨買いを行ったとみられ、これがルーブルが下落する要因の一つとなりました。加えて、経済制裁はロシア経済の更なる下押し圧力となるとの懸念も市場心理の重石となりました。

欧米による経済制裁は現在も続いています。しかし、米大統領選挙戦の中でロシアとの関係改善を表明していたトランプ氏が次期大統領に選ばれたことで、市場では対ロシア制裁が解除されるのではないかとの期待がやや高まっています。

仮に近い将来、経済制裁が解除されれば、ロシアの経済にプラスに働くことが予想されます。しかし、米国の政策動向の一方で、欧州連合(EU)が制裁延長に動く可能性もある等、先行きの不透明感が残ることから、過度な期待を持たず、引き続き注意することが必要であると考えています。

【図表】ロシアに対する主な経済制裁の内容 (2016年12月16日時点)

⑤外貨準備

2014年にルーブルが急落した時にはロシア中銀が通貨防衛のためルーブル買い/外貨売りを行い、外貨準備が急減しました。このまま外貨準備が減少すれば、国・企業が外貨建て債務の返済に対応できなくなると懸念され、ロシアに対する信用力が大幅に低下しました。

原油価格が底打ちの兆しを見せた場面では、政府はルーブル買い/外貨売りを控えたほか、2015年5月にはルーブルの反発を受けて、急激なルーブル高を避けるためにルーブル売り/外貨買いを実施したこと等もあり、外貨準備は緩やかに回復しました。

また、ロシアの外貨準備の中には過去のロシア危機の教訓を基に原油からの収入を積み立てている「準備基金」が含まれています。2014年以降の原油価格の急落を受けて財政赤字が拡大したため、ロシア政府はこの準備基金から財政赤字の一部を補てんしています。今後も当面は財政赤字が続く見込みであることから、準備基金が減少すれば市場に影響を及ぼす可能性がありますが、ロシア政府は財政支出削減や国営会社の民営化による収入増等、財政改善に意欲を示しており、今後の政策動向が注目されます。

【図表】ロシアの外貨準備の推移 (2003年12月31日~2016年12月16日、日次)

⑥格付動向

ロシアのソブリン格付は主要格付会社3社で投資適格級と投機的等級に分かれています。ロシアの外貨建てソブリン格付は、フィッチ・レーティングスがBBB-と投資適格級としている一方、S&Pグローバル・レーティング社(S&P)はBB+、ムーディーズはBa1とそれぞれ投資適格級から1ノッチ低い投機的等級となっています。

S&Pが2015年1月26日に格付を引き下げて以来、この3社による格付変更はないものの、投機的等級への格下げや投資適格級への格上げといった格付動向は市場心理に影響し、市場を左右すると考えられます。

【図表】ロシアの外貨建て長期債格付の推移 (1996年12月31日~2016年12月16日、日次)

【今後の見通し】

ロシア経済は消費・生産活動が弱含んでいるものの、ロシアを取り巻く環境は以前に比べて改善しつつあり、国際通貨基金(IMF)は2017年にプラス成長になると予想しています。

通貨ルーブルについては、当面は比較的落ち着いた動きでの推移が継続する見込みです。OPEC加盟国・非加盟国が約15年ぶりに協調減産に合意したことで原油価格が以前に比べ緩やかに推移していることや、中銀が利下げに対し機動的、且つ慎重な姿勢を取っていること等が通貨の安定性に寄与するものと考えます。

ロシアの債券市場は堅調な推移が見込まれます。足元でルーブルが安定的に推移する中、インフレ鈍化期待や緩やかな利下げ期待等が債券市場のプラス材料になると予想されます。その他、格付動向も注目されます。

【図表】IMFによるロシアのGDP成長率見通し (2015年~2017年)
【図表】ロシア国債指数(ルーブル建)の推移 (2009年12月31日~2016年12月16日、日次)
ロシア国債(指数): JPモルガン・GBIロシア指数(ルーブル建)
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