2015年11月2日

変動期に強い投信、弱い投信

相場急落がファンド直撃 国内債券型は比較的安定


週刊エコノミスト 2015年11月3日号(10月26日発行)掲載
執筆者:ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社
資産運用研究所 所長 藤原 延介


 今年5月に初めて100兆円を突破した公募投資信託の総残高は、8、9月と大幅に減少し、9月末時点で93.1兆円となった。残高減少は8月11日の中国・人民元切り下げ発表を受けた「人民元ショック」をきっかけとする相場低迷に起因している。その影響は新興国市場でより大きく、日本の投信市場で人気を博しているブラジル・レアル関連ファンドは、とりわけ大きな下落に見舞われた。

 人民元ショックは8月の出来事だが、新興国市場の変調はそれ以前から既に始まっていた。新興国の代表的株価指数であるMSCIエマージング指数(円換算)は9月まで5カ月連続の下落、特に7~9月では20%を超える下落となり、金融市場を混乱させた。日本に関しては、2012年末の安倍晋三政権発足や13年4月の日銀による異次元緩和の導入などを背景に円安・株高が進み、しばらく目立った下落相場を経験していなかったことも、今回の相場急落の印象を大きくしたと言えそうだ。

3年半ぶりの相場急落
 
 日本株・債券、先進国株・債券、新興国株・債券の六つの資産分野と、6資産を均等配分で保有した場合の値動きについて、図表1で確認してみよう。


 6資産均等配分における今年7~9月の下落率は9.3%となっている。前回これ以上の下落を経験したのは12年3~5月(6資産均等配分で9.7%下落)で、約3年半ぶりの急落となった。さらにさかのぼると、11年7~9月(同12.2%下落)、10年4~6月(同9.7%下落)も今回を超える下落率で、リーマン・ショックで下落率の大きかった08年9~11月(同29.7%下落)から数えると7年間で5度の相場急落を経験していることになる。

 一方で、相場急落時のそれぞれの資産分野の値動きを見ると、日本債券だけは安定的な値動きを維持していることが確認できる。リスク資産が売られる局面は、格付けの高い日米独など主要国国債が安全資産として買われやすく、今回の急落局面も同様に米国債やドイツ国債の価格は上昇している。しかし、為替市場ではリスク回避通貨として円が買われる傾向があるため、円換算した先進国国債もやはり下落する側になっている。リーマン・ショック前には資産分散型の投資信託が人気となったが、資産分散による値下がり抑制の効果が効きにくかったのは、こうした相場急落時の値動きの特徴によるためである。

 当時の資産分散型の中には、海外資産だけを組み合わせたもの、さらには新興国資産や高利回り資産を中心に分散を行うものなどもあり、6資産均等配分の29.7%を超える大きな下落率となったファンドも少なくなかったようだ。


避難先は為替ヘッジ型

 ここで、実際に投信のデータを使って値動きの大きさを見ておこう。図表2は公募投資信託を六つの資産分野とアセットアロケーション型(複数の資産分野での運用)の7分類に区分し、リーマン・ショック以降の5回の急落時の各分類に該当する投信の平均騰落率を示したものである(便宜的にREITファンドは各地域の株式型に含めている)。

 5回の相場急落の局面において、国内債券型のパフォーマンスが安定する一方、他の資産に投資した場合はいずれのケースでも騰落率がマイナスになったことが確認できる。

 なお、国内債券型は08年9~11月のみマイナスとなっているが、これは当時の国内債券ファンドは本数が少なく、転換社債に投資するファンドの比重が高かったために、平均値としてマイナスになったという背景がある。日本国債を中心に投資するファンドでは、この時期もプラスとなっており、一般的な国内債券ファンドは相場急落時の避難先として有望であると言えるだろう。

 国内債券型以外を見ると、株式よりも債券、新興国よりも先進国の方が下落率は抑えられているが、先進国債券も5%以上の下落で、リーマン・ショック時は2割近い下落に見舞われている。個別ファンドの下落局面の動きを見ると、プラスのリターンとなっているファンドもあるが、為替ヘッジを行っているケースがほとんどである。つまり、為替ヘッジ付きの先進国債券ファンドであれば、国内債券ファンドと同様に相場急落時の避難先となりうるということである。

 ただし、先進国債券といっても主要国の国債から、投資適格社債、ハイイールド債券、ハイブリッド証券など幅が広く、信用危機的な状況に陥った際には、投資適格の中でもできるだけ格付けの高いところに投資することが資産防衛につながると考えられる。

 アセットアロケーション型については、リーマン・ショック時を除いても平均10%近い下落となっており、これが1~2年に一度は起きている計算となる。足元で資金流入が見られるアセットアロケーション型の商品を見ると、リーマン・ショックなどの教訓を生かして、国内債券や為替ヘッジ付きの先進国債券を多く組み入れるケースも多い。一方で、低金利環境下で円建ての債券を増やすということは、円債部分の比率と手数料水準のバランスによっては、負けにくいだけでなく、勝ちにくい商品にもなりかねない。また、相場急変時にアロケーションを変更するタイプの商品なども増えてきているが、急落時に保守的な資産配分に変更することにより、その後の上昇局面で出遅れるケースも見られるようだ。

 自分で資産配分を決められる投資家は、国内債券や為替ヘッジ付き外債の比重を高めることで値下がりを抑制したり、さらに上級者になればベア型ファンド(例えば日本株が下落すると上昇する仕組みの商品)を組み入れたりすることで、一時的にリスクを調整する方法も考えられる。しかし、その場合も取引のタイミングが重要になってくることは留意する必要がある。

 その他、リスクの大きさを一定に保つようなファンド、一定期間の最大下落率に目安を設けるようなファンドも出てきているので、そういった商品の活用も資産を防衛するという点では有効であろう。

 いずれにしても自分が許容できるマイナス幅を想定しながら、投資金額や資産配分を決めていくという姿勢が何よりも重要になると言えそうだ。


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執筆者のご紹介

    藤原 延介
    ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社
    資産運用研究所 所長

    大手信託銀行におけるマクロ経済調査及び株式運用、ロイター・ジャパンのリッパー事業部における投資信託の評価や業界分析業務を経て、2007年にフィナンシャル・ストラテジストとしてドイチェ・アセット・マネジメントに入社。付加価値の高い情報提供を目指し、独自の視点で資産運用業界の最新動向や投資環境を分析している。2015年10月より現職。

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