メディア寄稿|ニッキン投信情報

2020年3月16日

「スッキリ解説!ETF 最終回 ETFはどこへ向かうのか」

ニッキン投信情報 2020年3月2日号掲載

<執筆者紹介>
ドイチェ・アセット・マネジメント
機関投資家営業部 岸本 拓之(きしもと・ひろゆき)

三菱UFJ信託銀行にて日本初の日本版預託証券による海外ETFの東証上場プロジェクトに関与。
2018年より現職。DWSのETFブランド「Xトラッカーズ」を含むパッシブ商品のプロモーションを推進。
慶應義塾大学法学部卒。

ドイチェ・アセット・マネジメント 機関投資家営業部 ETFスペシャリスト 岸本 拓之

最終回の今回は、今まさに生まれつつあるETFの新しいトレンドと、今後予想される展開をお話しします。キーワードは「低コストへの流れが生み出す変革のうねり」と「ETFの再定義」です。

一つ目のキーワードについて、ETFは比較的保有コストが低く、残高が急成長しているのは以前触れた通りです。残高増で規模の経済が働き運用が効率化、運用報酬は下がり更に資金が流入――。行き着く先は運用報酬がゼロになることですが、米S&P500指数に連動するETFのうち1本の運用報酬は、既に0.03%まで低下しています。また、米国では期間限定で運用報酬をゼロにするETFも現れました。プレーンで残高の多いETFではその多くがゼロフィーに近くなる日も遠くないかもしれません。

すると次に何が起こるでしょうか。大規模な運用会社はフィーを下げた分をまかなうべく規模を追求し、業界再編が促されるかもしれません。また、規模を追求しない運用会社はより高収益なニッチ分野に特化していくと見ています。その一つがスマートベータの領域です。スマートベータとは、企業の配当利回りや財務状況等に着目してファクター投資の観点から銘柄選定・ウェート付けを行うもので、プレーンなETFと比較すると運用会社の「味」を出しやすく、付加価値があるものについてはある程度フィーも高くなります。投資家の皆さんが「ある程度フィーを払っても買いたい」と思うものを作るべく各社が頭をひねるわけですが、今後はこの分野で一層商品の分化が進む可能性があるでしょう。ESG投資とETFの統合も進んでおり、この分野の商品も日々増えています。

既に数千本ある商品の種類が更に増えると、その中から投資家に合うものを提案する資産運用アドバイザリーの存在感は増します。サービスに対価を払う習慣があまりない私たち日本人からすると違和感があるかもしれませんが、投資家の考え方が「商品そのものよりも、ポートフォリオ提案を含んだ質の高い運用アドバイスに対してお金を払いたい」とシフトしていく可能性があります。一部の運用会社が自社プラットフォームで自社商品のみ提案する資産運用アドバイザーを抱え込んだり、ロボアドバイザーの提供を始めたりしているのはこれと無縁ではないはずです。

二つ目のキーワード「ETFの再定義」について。ETFは一部を除き指数に連動するルールベースのパッシブ運用ですが、スマートベータは対ベンチマーク指数ではパッシブであっても、対市場ではアクティブリターンを狙う戦略で、ETFの世界ではここ数年で急激に広がっています。ETFでありながら運用会社に裁量がある「アクティブETF」は以前からありましたが、最近は「ノントランスペアレント(非透明)ETF」というジャンルも生まれてきています。上場しているという意味ではETFの一種ですが、保有銘柄の日々開示が行われない点はアクティブ投信と似ています。この仕組みは運用会社が他社との同質化を避けやすく、より大胆でイノベーティブなファンドを生む可能性も秘めています。もはや「ETF=市場全体を買う」という単純なものではありません。テーマ型ETFも含め、今後も投資家の選択肢は増え、その質も高められ続けるでしょう。

低コストへの流れが生み出す変革のうねりの中で、ETFは様々なニーズを取り込んでいくと考えられます。運用会社も投資家も、今までとは違った考え方が求められるのは間違いありません。それがETFという「生態系」で提供者側と投資家が共存共栄していくための道であるはずです。


Copyright © ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第359号
加入協会 日本証券業協会・一般社団法人投資信託協会・一般社団法人日本投資顧問業協会
一般社団法人第二種金融商品取引業協会
【当社を装った詐欺的行為にご注意ください。】