メディア寄稿|ニッキン投信情報

2020年1月20日

「スッキリ解説!ETF 第4回 米国とは一味違う欧州市場の魅力」

ニッキン投信情報 2020年1月6日号掲載

<執筆者紹介>
ドイチェ・アセット・マネジメント
機関投資家営業部 岸本 拓之(きしもと・ひろゆき)

三菱UFJ信託銀行にて日本初の日本版預託証券による海外ETFの東証上場プロジェクトに関与。
2018年より現職。DWSのETFブランド「Xトラッカーズ」を含むパッシブ商品のプロモーションを推進。
慶應義塾大学法学部卒。

ドイチェ・アセット・マネジメント 機関投資家営業部 ETFスペシャリスト 岸本 拓之

第1回のコラム(10月7日号掲載)では、世界のETF市場で米国が約70%のシェアを占めることをご紹介しましたが、実は他にも注目すべきETF市場があります。それは欧州です。米国に次ぐシェア(約15%)があり、昨今では米系の運用会社も積極的に欧州でビジネスを展開しています。今回は、欧州系ETFプロバイダとしては世界最大の規模を誇る弊社DWSグループから見た欧州ETF市場についてお伝えします。

欧州のETF市場は急拡大しています。ETFGIのデータを基にDWSが集計したところによると、2003年には200億ドルだった残高が、19年10月現在では約45倍の9,030億ドルまで成長しました。年平均成長率でいうと27%で、これはグローバル市場(23%)を上回るスピードです。

00年代前半のETF黎明期の欧州市場の成り立ちは、米国市場とは大きく異なりました。今日、ETFでは裏付けとなる株・債券の現物バスケットをファンドが保有する「現物型ETF」が主流ですが、欧州では元々、大半のETFがスワップや先物を活用し、現物を保有せずに運用する「シンセティックETF」でした。そのメリットは、一般に現物型に比べてトラッキングエラーが低い傾向にある点、原証券の現物へのアクセスが困難なエクスポージャーを取りたい時に有効な手立てとなる点です。例えばベトナム株ETFなどは、代表的な株式指数への連動を目指そうとすると、原資産の流動性の観点から現物ETFでは効率的な運用が困難です。このため現物型のベトナム株ETFでは韓国等のベトナム外の銘柄を組み入れているものもあり、指数との乖離が大きくなりがちです。シンセティックETFはファンドが現物を持たずスワップカウンターパーティーからベトナム株指数のリターンを受け取る仕組みなので、上記の点がクリアできるのです。

もちろん、デリバティブを内包するスキームですから、投資に際してはスワップカウンターパーティーリスク等、現物ETFとは異なるリスクがあります。投資家ニーズの変化により今では欧州ETFの70%以上が現物型です。DWSも元々は100%シンセティックETFのプロバイダでしたが、14年に選択的に現物への切り替えを進め、今では4分の3は現物ETFでご提供しています。それでもグローバルで見ると、実は今年弊社で最も残高が集まっている株のETFはシンセティック型です。欧州全体で見ても、全てが現物に切り替わっているわけではなく、シンセティックETFは30%程度を占め依然として根強い人気を集めています。昨今ではカウンターパーティーリスクに関しても何重もの投資家保護策が講じられており、どちらが良い・悪いという単純な議論ではありません。コアなものは現物で、新興国株などでは特に真価を発揮するシンセティックETFを活用するなど、投資対象やリスク許容度に応じ使い分けをするのがよいでしょう。

欧州ETF市場のもう一つの特徴として、他地域との取引慣行の違いがあります。米国や日本では取引所取引が6~7割以上を占めますが、欧州では7~8割が店頭での相対取引です。マーケットメイカーと呼ばれる取引参加者が相対取引の相手方となり、主に取引所の外で様々な取引手法を駆使し、国境を越えて欧州ETF市場に大きな流動性を供給しています。複数の国があり国ごとの取引所に流動性が分散する欧州においては、物理的な意味での取引所を一つの市場と捉えることにはあまり意味がないのかもしれません。米国ETFの取引所取引に慣れている投資家の方から「欧州ETFは取引所の出来高が少ないから、流動性が低く取引コストが高いのでは」との指摘を受けることがあります。しかし前述の通り、取引所の出来高がすべてではなく、実は見かけ以上に欧州ETFには流動性があるのです。なお欧州では規制改革が進んでおり、今後はこの「見えない流動性」についても、透明性が向上していくことが期待されています。


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