2019年3月18日
「そろそろ知らなきゃ?ESG 最終回 ESG投資が『当たり前』になるためには?」
ニッキン投信情報 2019年3月4日号掲載
【執筆】 ドイチェ・アセット・マネジメント 投資戦略部長 藤野 哲
過去5回にわたってESG投資の基礎知識、国・地域別の動向、課題を見てきました。最終回となる今回はESG投資の展望について述べます。
■ESG投資はメインストリームとなるか■
足元においてESG投資は急速な拡大を見せており、「ESG」は注目を集めるトピックとしてメディアによる報道も増加しています。企業や運用会社にとっても、ESGやSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みは社会的な信頼を得るための重要な評価項目の一つになっています。しかし、ESG投資が中長期的に投資家の期待に応えることができなければ、一過性のブームに終わる可能性もあります。ESG投資が一時の流行を超えてメインストリームになるには、投資パフォーマンスの獲得や効果の分析・説明などの手法の強化に加えて、投資家のESG投資に対する意識をさらに高めることが鍵となりそうです。
■ESG投資のパフォーマンス■
ESG投資の拡大が続く一方で、その運用上の意義や効果に懐疑的な投資家も存在します。例えば、最終受益者に対するフィデューシャリ ー・デューティー(受託者責任)を負う一部の機関投資家は、相対的なパフォーマンス(シャ ープ・レシオなどのリスク調整後リターンを含む)が優れているとの確証が得られないとして、ESG投資をためらっています。これに対して、学術界と資産運用業界の双方から、ESG投資のパフォーマンスに関する研究結果が示されつつあり、今後の進展が期待されます。また、運用会社がESG投資において、相対的に優れたパフォーマンスを実際に生み出し、その効果を丁寧に説明することが、懐疑的な投資家の理解を得ることにつながるでしょう。
■ESG投資の意義■
投資家や最終受益者がその社会的な意義を理解し共感できれば、ESG投資はさらに幅広く受け入れられるでしょう。未来に対する責任を意識し、世界の持続可能な発展こそが人類の最優先課題であると認識することにより、その基盤となる自然環境や社会の公正を脅かしてまで短期的な経済や企業の成長を追い求めるのではなく、むしろ長期的な視野で投資することが自然だと考えられるようになるはずです。私個人としても、ESG投資で先行する欧州に根ざす運用会社の一員として、より多くの皆さまと共にESG投資の意義について理解を深めていきたいと考えています。本稿がその一助となれば、これに勝る喜びはありません。
最後に、当社も署名する責任投資原則(PRI)の条文を確認しつつ、本稿を終えたいと思います。
責任投資原則(PRI)
- 1. 私たちは投資分析と意思決定のプロセスにESG課題を組み込みます。
- 2. 私たちは活動的な所有者となり、所有方針と所有習慣にESG問題を組入れます。
- 3. 私たちは、投資対象の企業に対してESG課題についての適切な開示を求めます。
- 4. 私たちは、資産運用業界において本原則が受け入れられ、実行に移されるよう働きかけを
行います。
- 5. 私たちは、本原則を実行する際の効果を高めるために、協働します。
- 6. 私たちは、本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告します。