そろそろ知らなきゃ?ESG

2019年2月18日

「そろそろ知らなきゃ?ESG 第5回 課題は『情報不足』と『実態の見極め』」

ニッキン投信情報 2019年2月4日号掲載
【執筆】 ドイチェ・アセット・マネジメント 投資戦略部長 藤野 哲

  今回はESG投資に関する課題を見ていきます。ESG投資への取り組みが世界的に進展するとともに投資額の増加が見込まれる一方で、その拡大を阻害する要因も存在します。

■ESG情報の量と質■

 ESG投資の浸透を妨げる要因の一つ目としては、ESGを含む非財務情報について企業側の開示が不足していることが挙げられます。ESG投資関連の法制の整備が進んでいる欧州等を除き、ESG情報の開示は任意であるため、投資家は断片的な情報しか得られていないのが現状です。特に開示分野・項目によるESG情報の量と質のばらつきが企業のESG評価を難しくしていますが、ここ数年は各企業の努力もあり改善が見られます。また、業界全体の取り組みも活発化しており、当社も国際統合報告評議会(IIRC)等を通じて、国際的なフレームワーク作りに運用会社の立場から参画しています。

 一方、格付け機関等の情報ベンダーが分析・配信する企業のESGレーティングを活用する投資家も増えています。しかし、同じ企業でも情報ベンダーによってESGレーティングや更新タイミングに大きな差が生じることもあるため、情報ベンダーのレーティング手法の特徴を踏まえた上で利用しなければなりません。また、環境保護などESGの特定の側面に特化した情報ベンダーもあるため、複数のデータソースを補完的に活用することも有効です。

■ESGの偽装と形骸化■

 ESG投資と、企業によるESG対策が活発化する中で、ESGに関する偽装と形骸化の問題も表面化しています。例えば、ESGに関する問題や課題への配慮を装い、誤解を与えるようなマーケティングを行っていると批判されている企業があります。そのような行動は、英語で「取り繕う、ごまかす」という意味の「ホワイトウォッシュ」という単語を基に、環境保護への配慮を装う「グリーンウォッシュ」、人道主義への配慮を装う「ブルーウォッシュ」(国連旗の青色に由来)、国連SDGs(持続可能な開発目標)への配慮を装う「レインボーウォッシュ」(SDGsロゴの色合いに由来)などと呼ばれるようになりました。しかし、このような「ウォッシュ」の存在を認識していても、偽装された企業の取り組みや投資ファンドの本質を見抜くのは簡単ではありません。この問題に対処するため、欧州は「ウォッシュ」を防止するための分類システムの確立に動いています。

 運用会社側の問題としては、ESG投資をうたうものの中に、実態を伴わない、いわゆる形骸化したESG投資が含まれているのではないかという懸念があります。ESG投資のマーケティングには注力するものの、実効性のあるESG投資に必要な組織・哲学・運用プロセスを整備せず、投資結果の説明責任も十分に果たさなければ、運用会社として真のESG運用を提供したとは言えません。これに対して、国連責任投資原則(UN PRI)では署名機関に活動状況や進捗状況に関する報告を求めるとともに、取り組みの評価が低い署名機関に対して除名を含む厳しい措置を取ると表明しています。

 最終回となる次回は、ESG投資の展望を述べます。

    上記メディア寄稿文は日本金融通信社の承諾を得て記事を転載したものです。コピー等はご遠慮ください。

    当資料は、情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものではありません。当資料は、信頼できる情報をもとにドイチェ・アセット・マネジメント株式会社が提供しておりますが、正確性・完全性についてドイチェ・アセット・マネジメント株式会社が責任を負うものではありません。当資料記載の情報は、作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況によって予告なく変更することがあります。市場や経済に関するデータや過去の運用実績は記載時点のものであり、将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。

    D-190116-4


執筆者のご紹介

    藤野哲(ふじの・さとし)
    ドイチェ・アセット・マネジメント
    投資戦略部長

    機関投資家等に対する投資戦略の提案や開発を担当。
    CFA協会認定証券アナリスト。米国公認会計士。神戸大学経済学部卒業。

Copyright © ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第359号
加入協会 日本証券業協会・一般社団法人投資信託協会・一般社団法人日本投資顧問業協会
一般社団法人第二種金融商品取引業協会
【当社を装った詐欺的行為にご注意ください。】