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メディア寄稿(ニッキン投信情報)

2019年1月28日

特集 投信窓販、今後10年のグランドデザイン
今後10年で〈商品〉はどう変わるか?
「投資信託商品はよりシンプルに回帰」

ニッキン投信情報 2019年1月14日号掲載
【執筆】 ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社 資産運用研究所長 藤原 延介

 1998年12月に銀行等金融機関が投資信託の窓口販売をスタートしてから20年が経過した。直後の1999年2月に日本銀行がゼロ金利政策を導入、2000年以降のITバブル崩壊、2001年12月に米エネルギー企業のエンロンが破綻した「エンロン・ショック」といった厳しい出来事が続いたものの、低金利下での金融機関の安定的な収益源になるとの期待から、様々なタイプの商品が設定された20年だったと言える。REITファンドやBRICsファンド、新興国通貨に投資する商品など、投資対象資産の幅が大きく広がる一方、毎月分配型ファンドなど運用実績を高める以外のサービスへのニーズが拡大した。こうした要因から、2003年以降の円安株高局面において、国内の株式投信のファンド本数は飛躍的に増加していくこととなった。

 

1. 2018年の振り返り

 一方で、投資信託残高はファンド本数ほど増加したとは言えず、1本当たりのファンド残高は小規模化しているのが現状だ。2015年6月に公表された「金融・資本市場活性化有識者会合意見書」も、「小規模の投資信託が多数存在する状況にあり、業者にとっては運用コストや事務コストが大きく、顧客にとっては自らのニーズにあった商品を見つけることが難しい」と指摘している。そのような規制環境の変化もあり、2018年は2004年以来、14年ぶりに国内公募投資信託のファンド本数が減少に転じたようだ。2018年の新規設定ファンド数は407本と2017年の523本から大きく減少し、小規模ファンドを中心にファンドを償還する動きも広がっている。おおよその投資対象資産、投資対象国・地域が出そろったこともあり、今後ファンド本数が増加する局面は終わり、既存ファンドを活用する流れが強まることが予想される。

 

2. 日米比較の鍵は「シェアクラス」

 2018年の投資信託市場を振り返ってみると、これまでの売れ筋商品であった毎月分配型ファンドからの資金流出が進み、1兆円ファンドが姿を消したことも話題になった。米国の残高上位ファンドは10兆円を超える規模感であることから、日本のファンド残高と比較されることも多いが、ここにはシェアクラスの有無や公募・私募の統計データの違いもあり、日本のファンドの運用効率はデータで見るほど悪くないとも言える。例えば、海外のファンドでは、1つのファンドに販売手数料やその徴収方法などが異なる複数のシェアクラスを設定するのが一般的で、それはAシェア、Bシェアなどと呼ばれる。今後の日本の投資信託商品の変化を占う上でも参考になりそうなシェアクラスの考え方について、詳しく見ていくことにしたい。

 米国で最大のアクティブ型ファンドであるアメリカン・ファンズの「グロース・ファンド・オブ・アメリカ」を例に取ると、11月末時点で1,830億ドル(約20.5兆円)の残高となっているが、同ファンドには17のシェアクラスが設定されている。設定時期も様々で、最も設定日が古いのはAシェアの1973年11月30日なので、45年の運用実績を有する長寿ファンドとなっている。17のシェアクラスのうち4つは大学資金積み立ての529プラン向け、また別の8つは確定拠出年金(DC)など退職プラン向けとなっている。残る5つが一般的な販売経路で購入されるが、投資一任口座等で購入される大口投資家向けのFシェアを除くと、誰でも購入可能なものは販売手数料のかかるAシェアと、一定期間で解約手数料のかかるCシェアのみとなっている。残高が圧倒的に大きいのは最も古く設定されたAシェアだが、足元で残高は伸びておらず、最近設定されたF2/F3やR6といった経費率の低いシェアクラスへの資金流入が目立っているようだ。

 

3.日本でも実は効率化が進行中

 各シェアクラスの経費率は残高拡大によって徐々に引き下がってきたという経緯もあるが、FシェアやRシェアでは、フィーの引き下げ競争激化により、より経費率の低いシェアクラスが新たに設定されているという点も興味深い。日本でも、積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)の導入を控えてインデックスファンドで信託報酬の価格競争が起きたという事例もあるが、こうした場合に、ファンド数が増加したとカウントするかどうかは、日米の大きな違いである。また、大部分がリテール向けファンドで構成される日本の公募株式投信に対して、米国では機関投資家も経費率の低いシェアクラスを購入しており、日本の統計上は別物として扱われる私募投信の投資家層が、米国の投資信託統計には混在している。日本でも私募投信と公募投信が同一のマザーファンドに投資しているケースも増えてきているため、資金の運用の実態は、見た目のファンド数よりも効率化されてきている。そういった意味では、日本でも、マザーファンドベースで見た長寿ファンド化、大型ファンド化、低コストファンド化の動きはすでに進んでいると言えるだろう。

 

4.今後10年の商品トレンド予想

 また、フィーを引き下げた新しいファンドやシェアクラスを設定した場合、そのファンドが誰でも購入可能かどうかという点も、日米の違いとして認識しておく必要があるだろう。日本にシェアクラスという概念がなく、誰でも買える公募か、そうではない私募かのどちらかでファンドを設定してきたことは、今後修正が必要な点だと思われる。実際に、ラップ口座専用ファンドという形で、投資家を住み分ける動きはすでに広がってきている。様々な資産クラスの商品がある程度出そろった今、新しい投資対象を探して新商品が誕生するという局面はすでに終えんを迎えつつある。今後の課題は、投資家ニーズの細分化とビジネスの効率化を両立させながら商品を整理していくことではないか。米投資信託のシェアクラスの制度に見習えば、運用会社はより運用パフォーマンスを高めることに特化し、販売会社と協力しながらビジネスケースに応じた商品を効率的に用意することが求められる。毎月分配など運用以外のサービスを投資信託という器に詰め込みすぎて、全投資家にそのサービスにかかるコストを負担してもらうという構造では、多様化する投資家ニーズには応えられない。運用と販売・サポート、オペレーションといった機能の分離が進み、それぞれのコストを「見える化」したフィー体系が求められる一方で、投資信託の商品自体はよりシンプルなものに回帰していくと考えられる。

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