2018年10月15日

「バランス型ファンドへの資金流入と人気商品の条件」

ニッキン投信情報 2018年10月1日号掲載
【執筆】 ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社 資産運用研究所長 藤原 延介

 バランス型ファンドへの資金流入が続いている。アベノミクスによる円安、日本株相場の反転などを受けてバランス型ファンドを見直す機運が強まり、運用コンサルティングを手掛けるイボットソン・アソシエイツの分類を基にしたデータでは、2014年12月以降、45カ月連続で資金流入となった。14年以降で見ても、資金流出となったのは、14年11月の1カ月のみとなっている。こうしたバランス型ファンドへの継続的な資金流入の動きは、円安・株高トレンドが続いた05年~07年頃にも見られたが、今回の局面では、人気の高い商品の特徴が当時と変化している点も見逃せない。

 

 1.バランス型ファンド人気化の要因

 こうした変化の要因として考えられるのが、低金利の長期化と少額投資非課税制度(NISA)の存在であろう。14年からスタートしたNISA(現在の一般NISA)口座においては、売却資金の再投資が非課税枠を利用したとみなされるという特徴から、非課税期間の5年間で同一ファンドを保有し続けることが望ましい。一方で、長期化する低金利環境において、債券だけで非課税メリットを高めるだけのリターンを期待することは難しい。その結果、5年間という長期において柔軟に資産配分を変更できる、株式と債券の配分を固定しないタイプの商品へのニーズが高まったと考えられる。なお、金融危機前のバランス型ファンドは「分散型」と呼ばれることも多く、資産を固定比率で分散するタイプが一般的だったことから、最近のバランス型ファンドは「アロケーシ ョン型」と呼ばれることも多くな っている。下のグラフでバランス型ファンドを6つのタイプに分けた残高推移を見ると、金融危機前後の商品性の違いがはっきりと確認できる。

 アベノミクス以降の残高拡大局面では、市場環境によって資産配分を機動的に変える「TAA(タクティカル・アセット・アロケーション)型」と「リスクコントロール型」が残高拡大をけん引している。も っとも、資産配分が相対的に固定されているタイプでも販売が好調なファンドもあり、とりわけ足元の数年間では、株式への投資配分が相対的に小さく、値動きが安定する傾向にある「安定型」も残高拡大に寄与している。一方で、「積極型」や「標準型」の残高は07年のピーク時と比較すると、遠く及ばない状況だ。ここからは、足元における資金流入額の上位ファンドの一覧を見ながら、人気商品にどのような特徴があるのか探っていきたい。

 

2.人気商品の特徴

 18年に入って資金流入額の多いバランス型ファンドに見られる1点目の特徴としては、低リスクであることが挙げられるだろう。バランス型ファンドは、投資環境が良好な時期に投資初心者によって初めて購入されるケースが多く、投資経験者においては、預金など安全資産からまとまった資金を移す場合に、こうした低リスクのバランス型ファンドを活用するケースが多い。また、リーマン・ショックをきっかけとする金融危機で、予想を上回る大きな値動きを経験した商品提供側も、アベノミクス以降の局面では、より値下がりを抑制するタイプのバランス型ファンドを初心者向けに位置付けるケースが増えたと考えられる。金融危機時には、リスク資産が一斉に値下がりしたため、国内債券やヘッジ付きの外国債券の配分が少なかった商品は大きな値下がりに見舞われた。足元で人気商品となっているものでは、これらの配分を高めにして、リスクを抑制した商品が資金を集めていると言えそうだ。

 2点目の特徴としては、商品性の分かりやすさであろう。実際、金融危機を挟んで資産配分を変動させるタイプに人気がシフトしている一方で、金融危機以前に設定された商品も含めて、固定配分のバランス型ファンドで資金流入が見られる商品も散見される。これらは、日本株やJ-REITに一定割合投資するなど、値動きが分かりやすく、投資初心者がリスク資産に投資するに当たって透明性を兼ね備えた商品と言える。アベノミクス以降の日本株上昇による相場要因という部分もあるが、取っているリスクの分かりやすさは、バランス型ファンドが人気化するために重要なポイントとなっている。

 そして、バランス型ファンドに限った話ではないが、長期の運用実績も人気商品になるための条件となりつつある。今年6月に金融庁が公表した「投資信託の販売会社における比較可能な共通KPI」では、「投資信託預り残高上位20銘柄のコスト・リターン」、「投資信託預り残高上位20銘柄のリスク・リターン」の開示が期待されているが、ここで用いるリターン(及びリスク)は過去5年間の実績とされている。18年1月からスタートしたつみたてNISAにおけるアクティブ運用を行う投資信託の商品要件でも「信託開始以降5年経過」していることが求められるなど、長期間における運用実績を重視する流れはさらに強まっていくことが予想される。とりわけ、資産配分を機動的に変更するタイプのバランス型ファンドは、長期の運用実績がその商品の信頼感につながっていく傾向がより強くなるだろう。

 

3.今後の展開

 なお、顧客ポートフォリオのコアとなるようなバランス型ファンドは、共通KPIの観点では、低コストであることも今後の重要なポイントとなるだろう。これらの全てを兼ね備える必要はないものの、やはりこうした特徴を持った商品を中心に、バランス型ファンドの拡大は継続すると思われる。低金利の継続や市場の不透明感の高まりといった金融市場環境、NISAによる税制メリットに加えて、規制環境もバランス型ファンドの拡大を後押しする可能性が高い。ちょうどバランス型ファンドの資金流入トレンドが始まった14年頃からは、金融庁が監督指針の中で、残高を重視する営業員評価への見直しを打ち出したり、「預り資産残高」や「顧客基盤の拡大」への意識を高めたりするなど、資産運用ビジネス自体の転換も促している。資産運用業界はこうした変化を好機と捉え、バランス型ファンドの運用・サービスの質を上げていくことで、投信市場拡大における中心(コア)の存在としていくことが期待される。

 

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執筆者のご紹介

    藤原 延介
    ドイチェ・アセット・マネジメント
    資産運用研究所長

    ファイナンシャルストラテジストとして2007年に入社。2015年10月より現職。付加価値の高い情報提供を目指し、独自の視点で資産運用業界の最新動向を分析。慶応義塾大学経済学部卒業。

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