DWS欧州通信

2018年7月17日

「DWS欧州通信 第4回 ECBの金融政策は今後どうなる?」

ニッキン投信情報 2018年7月2日号掲載
【執筆】 ドイチェ・アセット・マネジメント 運用部 ポートフォリオ・マネジャー 吉田一貴

市場の不透明要因がECBの政策に影響を与える可能性を注視

 イタリアの政局動向等を受けて、市場の変動性は直近高まっています。同国の政治的空白は解消されたものの、今後の新政権の政策方針を受けた財政赤字拡大への懸念や、ポピュリズム的な反EU姿勢に対する警戒感は残存しています。また、スペインの政治情勢や、年前半をピークとした欧州景気の減速懸念等、他のリスクオフ要因も引続き不透明材料として注視が必要な状況です。

 こうした中、欧州中央銀行(ECB)による緩和的な金融政策は、年後半から来年にかけてより注目を浴びると思われます。上述したユーロ域内の政治リスクの高まりや、景況感鈍化の継続に加えて、米国を中心とした保護主義的な通商政策の拡大や新興国の景気動向等、潜在的なリスク要因が高まっていることなどが、今後のECBの金融政策決定に影響を与える可能性は否定出来ません。 

イタリアの政局動向は引続き市場の変動要因

 政治関連の先読みは難しいものの、イタリアにおける政局動向については、新政権の財政拡張姿勢と反EU的な主張が、金融市場を中心に今後も影響を与え、市場の変動性を高めることは十分に予想されます。イタリアの国債利回りが大きく上昇すれば、政府債務比率の高さを背景とした財政懸念や、イタリア銀行部門の流動性逼迫や貸し出しの減少、家計や企業心理の悪化等、景気の下振れに関しても懸念が高まります。目先は、五つ星運動と同盟の新政権が本年秋までに提出予定の来年度予算案を欧州委員会が承認するかどうかが焦点になるものと思われます。ECBは各国の政治等を考慮・配慮しないのが基本であり、ユーロ圏全体の景気や物価への影響を中長期的な観点で見極めながら、政策を決定する方針ではありますが、市場参加者の間ではECBが市場安定のため、発言等によるコミュニケーションを含めた何らかの対応をするのではとの思惑も一部残存しています。しかしこの点に関しては、直近の理事会でも、各国の政局によってもたらされる変動性は特別視しないとの見解や、他国への波及リスクも限定的である点等が述べられており、ECBが特段の対応をする可能性は低い状況です。また、ECB単独で対応可能な具体的政策ツールは現状無く、ECBによる条件付き国債購入措置であるOMT(アウトライト・マネタリー・トランザクション)実施には諸条件を満たす必要があり、現実的ではないと考えています。

ECBの緩和的な金融政策が市場を下支え

 ユーロ圏の景気拡大は継続しているものの、基調的なインフレ圧力は抑制されたままであり、ECBは引続き金融緩和が必要と考えていることから、金利正常化プロセスの早急な進展は見込んでいません。6月のECB理事会では、主要政策金利が据え置かれる中、インフレ見通しが維持される限り、9月までは月額300億ユーロの資産買い入れを継続し、10~12月は月額150億ユーロへ減額、そして年内での買入終了が発表されました。一方で、主要政策金利は少なくとも19年夏まで現行水準にとどまるとの方針も示され、具体的な時間軸を含める形で金利政策におけるガイダンスを強化する内容となりました。域内景気の減速の兆候が一部継続している点や保護主義の台頭と金融市場の変動性の高まり等の潜在的なリスク要因が、緩和的な金融政策の実施を理由付け・正当化したものと考えられます。

 2019年10月末に総裁任期の満了を迎えるマリオ・ドラギECB総裁の今後の意思決定が注目される中、引続きECBによる慎重で・我慢強く・粘り強い対応が継続され、資産買い入れ(ECBが購入した債券の償還元本の再投資含む)・低金利政策等の緩和策が欧州市場の下支え要因になるものと見込んでいます。

※当コラムは2018年6月15日時点の情報に基づき執筆しております。

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執筆者のご紹介

    吉田一貴
    ドイチェ・アセット・マネジメント
    運用部 ポートフォリオ・マネジャー

    国内運用会社を経て2014 年入社。クライアント・ポートフォリオ・マネジャーとして債券プロダクトの運用に従事。一橋大学商学部卒業。

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