2018年2月19日

「投信ビジネスの変化で魅力が高まる長寿ファンド」

ニッキン投信情報 2018年2月5日号掲載
【執筆】 ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社 資産運用研究所 所長 藤原 延介

 質の高いアクティブ型ファンドとは

 「長期・積立・分散」投資の実践においてインデックス運用を行うファンドの存在感が高まる一方、質の高いアクティブ型ファンドを再評価する機運が強まっている。2017年10月25日に公表された平成28事務年度「金融レポート」においても、インデックス運用の増加で市場の価格発見機能が失われるといった観点などから、「質の高いアクティブ運用投資信託が普及していくことも重要である」との指摘がなされている。実際にこれを税制面からサポートする動きも出てきている。2018年からスタートした積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)では、公募投資信託の商品要件が定められている。このうち、アクティブ型ファンドの対象商品としては、信託報酬の要件(日本株ファンドならば税抜1%以下)に加えて、①純資産額が50億円以上であること、②信託開始以降5年が経過していること、③信託期間の3分の2の期間で資金流入超であること、の3つの要件が課されている。とりわけ、「信託開始以降5年が経過していること」は純粋にファンドの設定時期を限定するものであり、質の高いアクティブ型ファンドを見極める上で、運用期間の長さが1つの指針になっているものと理解できる。5年という期間では「長寿ファンド」とは呼べないまでも、質の高いアクティブ型ファンドを探す上で、こうしたトラックレコードの長さが重要であることを示唆している。

 運用中の公募株式投信が5,000本を超える中で、つみたてNISAの対象商品は、指定インデックス型投資信託125本に対して、アクティブ型ファンドは15本にとどまっている(2018年1月24日時点)。この背景には、大多数のアクティブ型ファンドが、「③信託期間の3分の2の期間で資金流入超」を満たしていないことがあげられる。個人的には、「信託期間の3分の2」よりも、流出入額の小ささや足元の数年において資金流入傾向であることが重要だと考えているが、いずれにしても運用パフォーマンスの優劣が時間の経過とともに変化することを勘案すると、いったんはこうした要件で絞らざるを得なかったのかもしれない。なお、つみたてNISAの商品要件は、国内投資信託のベビーファンドを対象とするものであるが、アクティブ型ファンドが15本しか存在しない中では、外国籍投信やマザーファンドベースの実績などに置き換えて、こうした要件を満たすアクティブ型ファンドに評価が集まることが予想される。

 

長期間の運用実績がより重要に

 ここで、質の高いアクティブ型ファンドを見極める上で、運用期間の重要性について考えてみたい。つみたてNISAの商品要件策定にかかわった「長期・積立・分散投資に資する投資信託に関するワーキング・グループ」の報告書(2017年3月30日公表)によれば、投資家から「継続的に選択・支持されているという点を尊重」して設けられた規準とされている。5年の運用実績があり、かつ「信託期間の3分の2の期間で資金流入超」ということであれば、「長期・積立・分散」投資の対象商品としての適格性は高いという考え方である。また、質の高いアクティブ型ファンドを見極める上で、長期の運用実績が求められるのは、より運用力の再現性を検証できるということだろう。一般的に、投信評価における評価期間は最低でも3年間とされている。これが、5年、10年となるにつれて、インデックス型ファンドのパフォーマンスを上回る商品は減少していく傾向にあるため、より長期間の運用実績を見ることが重要になる。この点が、いわゆる「長寿ファンド」の最大の魅力と思われる。

 例えば、日本株ファンドを例に、2013年~2017年の5年間で見てみると(図表1)、アベノミクス以降の上昇相場を捉えた期間となるため、アクティブ型ファンドのパフォーマンスは、インデックス型を大きく上回っていることが確認できる。1年で見ると、さらにアクティブ型とインデックス型の差が大きくなっているが、1年の実績をもって質の高いアクティブ型ファンドかどうかを判断することは避けるべきだろう。一方で、欧州危機が深刻化した2011年~2012年の下落相場ではインデックス型のパフォーマンスが優位となっており、10年で見たパフォーマンスはアクティブ型とインデックス型の差が小さくなっている。この下落相場をどのように乗り越えたのかを確認できるのが長期のトラックレコードであり、さらに20年となるとITバブル崩壊やリーマン・ショックの値動きも振り返ることができる。日本株ファンドでいえば、2000年前後のITバブルを経験した「長寿ファンド」も多く存在しており、質の高いアクティブ型ファンドの見極めがより可能になるだろう。こうした値動きの面から評価する定量評価だけでなく、運用体制や組織の安定性、リスク管理手法など定性評価と組み合わせれば、「長寿ファンド」の運用実績の再現性の検証はさらに水準が高まるものと考えられる。

 

【図表1】2017年末時点における国内株式ファンド(運用コスト控除後)の平均収益率(年率)

 

ビジネスモデルの変化と長寿ファンド

 実際に日本の投信販売の現場でも、こうした長期の運用実績の魅力は伝わり始めているようだ。設定後5年以上経過したファンドの販売比率を見てみると(図表2)、2016年には同比率が4年連続で上昇し、6割近くに達している。2017年は、ここ数年で新たに設定されたフィンテック関連の株式ファンドといった比較的新しい投資テーマが注目されたことで、同比率は5年ぶりに低下した。それでも依然として5割を超えており、トラックレコードの長いファンドを販売する動きが定着してきたものと考えられる。2017年は新規設定ファンドの当初設定額が1兆円を下回って最低水準を更新するなど、新規設定ファンドを当初募集期間で積極的に販売するというビジネスモデルから既存ファンド中心の販売に転換しつつある。今後も質の高いアクティブ型ファンドを追求する動きから、長期の運用実績を重視する流れは継続することが予想され、その中で「長寿ファンド」の果たす役割は一層大きくなることが期待される。

 

【図表2】ETF除く追加型株式投信の設定額(販売額)における設定後5年以上経過したファンドの割合(年次)

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執筆者のご紹介

    藤原 延介
    ドイチェ・アセット・マネジメント
    資産運用研究所長

    ファイナンシャルストラテジストとして2007年に入社。2015年10月より現職。付加価値の高い情報提供を目指し、独自の視点で資産運用業界の最新動向を分析。慶応義塾大学経済学部卒業。

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