2017年3月21日

「意外と知らない? 投資信託の製造過程ウラ話
最終回 投資信託の償還は誰が決める?」

ニッキン投信情報 2017年3月6日号掲載
【執筆】 ドイチェ・アセット・マネジメント 資産運用研究所長 藤原 延介

 第5回(2月6日号掲載)では、投資信託の償還手続きについて、詳しく解説しました。特に、信託期間を終える前に償還を行う繰上償還の場合は、しっかりと受益者の意思確認を行った上で、償還手続きを進める必要があります。今回は、運用会社がどのように繰上償還を決定しているのか、見ていくことにしましょう。

 まず、ファンドの繰上償還を検討するにあたっては、ファンドマネジャーからのアドバイスがきっかけになることが少なくありません。繰上償還の最もよくある理由としては、残高の減少によって運用方針に沿った運用ができなくなるというものですが、こうした判断ができるのは、やはり実際に運用に携わっているファンドマネジャーです。

 株式には売買単位というものがあり、債券は1銘柄を購入する単位がさらに大きくなるというのが一般的ですが、ファンドの残高が小さくなると、なかなか思った比率で銘柄の分散ができなくなってきます。例えば、残高が1億円まで減少したファンドにおいて、ある銘柄が割安と判断し購入したいと思っても、その銘柄の売買単位が1,000万円とすると、その時点でその銘柄の保有比率が10%となってしまいます。ファンドによっては、一つの発行体への投資割合を純資産残高の10%以下にするという分散投資の規制がかかっているものもありますし、そもそも幅広い銘柄に分散投資できるというファンドのメリットが損なわれてしまいます。

 繰上償還を検討するにあたって、もう一つの経路としては商品部門からの提案があげられるでしょう。商品部門は、全ファンドの残高や損益等を管理する立場にありますので、例えば、繰上償還の条件となる受益権口数を下回った状態が長く続いているファンドや、ファンドから支払う費用の負担がパフォーマンスを阻害しているファンドなど、運用継続が困難になっているファンドを様々な視点でチェックしています。商品部門では、ファンド設定時と比較した投資環境の変化や投資家ニーズなどを勘案し、繰上償還するのか、あるいは、さらなるプロモーションを行ってファンドの残高拡大を目指すのか、慎重に検討を行います。その際には、ファンドの過去のパフォーマンスや、類似ファンドとの比較、類似ファンドの販売状況、販売会社の取り扱い状況なども参考に、繰上償還を決定することになります。

 ファンドを保有している投資家がいる中で、そのファンドの運用を終えるという決断は簡単なものではなく、繰上償還に当たっては投資家への情報提供も極めて重要になります。なお、全6回にわたってお届けした「意外と知らない?投資信託の製造過程ウラ話」は今回が最終回となります。連載では、投資信託がどのように設定され、運用され、償還されるのかを包み隠さず見て頂きました。投資信託は初心者向けの金融商品だと言われますが、その仕組みは十分に理解されていないと感じます。コラムを通じて、投資信託の理解が深まり、投資信託の信頼向上につながれば幸いに思います。(了)

 

公募投資信託の償還プロセス


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ニッキン投信情報



執筆者のご紹介

    藤原 延介
    ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社
    資産運用研究所 所長

    大手信託銀行におけるマクロ経済調査、ロイター・ジャパンのリッパー事業部における投資信託の評価や業界分析業務を経て、2007年にフィナンシャル・ストラテジストとしてドイチェ・アセット・マネジメントに入社。付加価値の高い情報提供を目指し、独自の視点で資産運用業界の最新動向や投資環境を分析している。2015年10月より現職。

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