2017年2月20日

「意外と知らない? 投資信託の製造過程ウラ話
第5回 製造過程の最後のプロセス~投資信託の償還の話~」

ニッキン投信情報 2017年2月6日号掲載
【執筆】 ドイチェ・アセット・マネジメント 資産運用研究所長 藤原 延介

 これまで投資信託の新規設定、運用中の業務について取り上げてきました。今回から2回にわたっては、製造過程の最後にあたる投資信託の償還について、そのプロセスと償還が決定されるまでのウラ事情を説明します。金融商品に限った話ではなく、どんな商品においても、発売が開始された後、一定期間を経て販売の中止が決められると、製造されなくなるという商品サイクルがあるものです。ファンドにおいても例外ではなく、投資環境の変化や残高の減少などを理由に、ファンドを償還せざるを得ないケースも少なくありません。

 詳しく見ていきましょう。ファンドの償還には「満期償還」と「繰上償還」があり、その意味は大きく異なります。ファンドには設定日とともに信託期間終了日(満期日)があらかじめ決められているケースがあります。この満期日にファンドを償還する場合は、「満期償還」と言われ、償還するために特別な手続きは必要ありません。一方で、信託期間を「無期限」としているファンドを償還する場合や、あらかじめ決められた満期日より前にファンドを償還するためには、「繰上償還」という手続きが必要となります。ファンドの目論見書などを見ると、残高減少で運用が困難になった場合などに備えて、「受益権口数が○○億口を下回った場合等は、償還となる場合があります」といった繰上償還の条件が記載されていますので、残高の推移などを見ながら繰上償還の可能性を判断することができると思います。

 繰上償還を行う際には、受益者の意向を確認する必要があります。実際の手続きについて、簡単に説明しておきましょう。現在の投信法が施行された2007年9月30日以降に設定されたファンド(新法ファンド)の場合、その手続きは「書面決議」と呼ばれ、運用会社(委託会社)・販売会社側が用意した書面で、投資家は賛成か反対かを意思表示することができます。意思表示をしない人は賛成とみなされ、3分の2以上の賛成をもって、繰上償還が成立することになります。

 一方で、2007年9月29日までに設定されたファンド(旧法ファンド)については、受益者の意向を確認する手続きは、「異議申立ての受付」によります。この場合は受益者自身が書面を用意する必要があり、反対する場合のみ書面で運用会社に意思表示をすることになります。こちらは2分の1を超える反対がなければ、繰上償還の成立となります。いずれも、意思表示をしない投資家の分は賛成とみなされることになるため、過去に繰上償還が否決されたケースはほとんどありません。なお、繰上償還に反対した受益者に対しては、買取請求期間を設ける必要がありますが、これは旧法ファンドのみに必要な措置となります。

 投資信託の繰上償還時にはこうした業務を確実に行わなければなりません。複雑な手続きを全て記憶する必要はありませんが、新規設定だけでなくこうした償還の手続きも重要であると認識しておくと、投資信託という金融商品への理解がさらに深まるのではないでしょうか。

※途中換金したい投資信託を、証券会社などの販売会社に買い取ってもらう方法。その後、販売会社が運用会社に解約請求を行う。

 

公募投資信託の繰上償還プロセス

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ニッキン投信情報


執筆者のご紹介

    藤原 延介
    ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社
    資産運用研究所 所長

    大手信託銀行におけるマクロ経済調査、ロイター・ジャパンのリッパー事業部における投資信託の評価や業界分析業務を経て、2007年にフィナンシャル・ストラテジストとしてドイチェ・アセット・マネジメントに入社。付加価値の高い情報提供を目指し、独自の視点で資産運用業界の最新動向や投資環境を分析している。2015年10月より現職。

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