2019年7月26日

6月27日に日本銀行が2019年1-3月期の資金循環統計を発表しました。1-3月期は日経平均株価が+6.0%と2四半期ぶりに上昇したほか、為替市場では米ドルが対円で+1.2%となるなど、投資環境は昨年10 -12月期から大きく改善しました。こうした金融市場の動きを受けて株式や投資信託といったリスク資産の時価評価が押し上げられ、2019年3月末時点の家計金融資産残高は、前期比+0.3%の1,834兆9,233億円と2四半期ぶりに増加に転じています。

ただし、この数字は過去最高を記録した2018年9月末時点の1,858兆4,608億円には届いていません。昨年10 -12月期は日経平均株価が-17.0%、米ドルが対円で-4.1%と大幅な下落に見舞われ、残高は前期比で-1.6%の減少となっていたことから、1-3月期に回復したと言っても、金融市場の混乱からの反動増にとどまったとも言えそうです。以下、主要金融商品について、足元の状況を確認しておきましょう。

家計金融資産における主要金融商品の残高シェアの推移

上のグラフは、各金融商品が家計金融資産全体に占めるシェアですが、今年3月末時点の「現金・預金(除く外貨預金)」の比率は52.9%と2四半期ぶりに低下しました。ただし、同比率がこの5年ほど52%前後で一進一退の動きとなっていたことを勘案すると、直近はやや高めの比率となっています。 代表的なリスク資産である「株式等」は10.0%と昨年12月末の9.5%から2 四半期ぶりにシェアは上昇し、「投資信託受益証券」(以下、投資信託)は3.9%と、こちらも2012年末以来の低さとなった2018年末の3.7%からは2四半期ぶりにシェアが上昇しました。

なお、1年前の2018年1-3月期の資金循環統計の公表時に過去分のデータが遡及修正され、投資信託のシェアは大きく下方修正されましたが、2016年以降はほぼ4%程度で一進一退となっています。 今回、投資信託のシェアが上昇したとは言っても、「貯蓄から資産形成」の動きは停滞していると言えそうです。外貨建て資産に投資する金融商品としては、「外貨預金」のシェアが2四半期連続で上昇して0.38%と2014年3月末以来の高水準、外国証券や外国投資信託が含まれる「対外証券投資」のシェアは1.34%と2四半期ぶりの上昇で2017年9月末以来の高さとなりました。続いて、主要金融商品の資金フローを見てみましょう。

家計金融資産における主要金融商品の資金フローの推移

上のグラフを見ると、「現金・預金」は賞与の影響などから季節性が見られる一方で、「株式等」は1-3月期に-5,621億円と、利益確定の動きから2四半期ぶりの資金流出となりました。過去1年間(4四半期)で3回目の資金流出となりますが、昨年10-12月期の資金流入も含めて、家計部門の日本株に対する逆張りの動きが示されました。また、投資信託は1-3月期に-6,065億円と4四半期連続のマイナスとなっており、2018年度(2018年4月~2019年3月)の投信販売が低迷していたことが改めて確認できたと言えるでしょう。

なお、「国債・財投債」は1-3月期に+2,897億円と4四半期連続のプラスとなるなど、2016年末まで32四半期連続の資金流出となっていたことを勘案すると、資金フローは大きく改善してきました。個人向け国債の償還がピークを越えたことに加えて、日銀のマイナス金利政策で適用利率に下限が設けられた個人向け国債を見直す動きが広がっています。また、外貨建て資産に投資する金融商品としては、「外貨預金」が+2,575億円と8四半期連続の資金流入、「対外証券投資」は+494億円と4四半期連続の資金流入となっており、外貨建て資産への需要は高まっているようです。

Part2では、家計金融資産の国際比較をするため、日本・ドイツ・米国の状況を確認しましょう。なお、ドイツの最新データが2018年12月末であるため、3カ国とも同時点で揃えてありますが、2018年末にかけて株式相場が急落していたため、ここ数年の平均的なデータと比較すると、リスク資産の比率が低めに出ている点は留意が必要です。

家計金融資産の構成比

(出所:Bundesbank、日本銀行、FRBのデータを基にドイチェ・アセット・マネジメント(株)が作成)

家計金融資産における預貯金の比率でみると、日本が50%台、米国が10%台に対して、ドイツはおよそ40%、投資信託の比率でみると、日本3.7%、米国11.2%に対して、ドイツは9.2%となっています。比較されることの多い日米で見ると、リスク資産の保有比率は両極端で、ドイツはその中間に位置付けられることが確認できます。投資家の年齢層や保守的な考え方も含めて、ドイツの資産運用の考え方は日本に似ている部分も多いと言えます。「貯蓄から資産形成」の推進を考える上では、米国だけでなく年齢や金利環境の近いドイツの状況も参考にして、日本の投資家に即した戦略・ポートフォリオを考えていくことも一案と言えそうです。続いて、公募投資信託における日米独の状況を確認し、ドイツの投資信託市場の動向を見ていきたいと思います。

純資産残高シェア

(出所:ドイツ投資信託協会、イボットソン・アソシエイツ、米国投資信託協会のデータを基にドイチェ・アセット・マネジメント(株)が作成)

公募投信の資産配分で見ると、株式ファンドの保有比率は米国が圧倒的に高く、日本とドイツは4割程度となっています。また、日本はREITファンドの存在感が目立っている一方で、ドイツではバランス型ファンドの比率が高いことが確認できます。ドイツは 日本と同様に、10年物国債がマイナス利回りとなるなど債券投資では期待リターンが限定的であるため、リスク許容度の低い投資家もバランス型ファンドにシフトしているようです。続いて、ドイツの公募投資信託における純設定額の推移を確認しましょう。

ドイツの公募投資信託(除くキャッシュ・ファンド)におけるタイプ別の純設定額(2007-2018年)

2018年はドイツの投信業界にとって厳しい1年となっており、全体の純設定額は+130億ユーロにとどまりました。内訳を見ると、目立った資金流入があったのは、バランス型の+216億ユーロだけで、バランス型は上の大分類で見ると2013年以降 ずっと資金流入額トップとなっています。金融危機以前は元本確保型がドイツの投信資金流入を牽引していましたが、その後の超低金利環境で、債券型からバランス型へと資金がシフトしてきたことがうかがえます。また、2018年は株式型が+7億ユーロ、債券型が-57億ユーロとなっていますが、これはETFを含めたデータで、ETFと一般的なファンドに分けると、より興味深い結果となっています。

ドイツにおける2018年のタイプ別純設定額(ファンドとETFの内訳)

上のグラフは、2018年の株式型、債券型、バランス型におけるETFと一般的なファンドに分けた純設定額ですが、株式型を見るとETFが+13.6億ユーロ、ファンドが-6.8億ユーロと、ETFだけがプラスだったことが確認できます。また、債券型はETFが +39.4億ユーロ、ファンドが-96.3億ユーロと、さらにETFとファンドで人気の違いが鮮明となっています。バランス型については、対象となるETFが多くないこともあり、ファンドが+215.4億ユーロとこちらに資金流入が集中しています。以上のことから、単一の資産クラスでは、ファンドからETFへの資金シフトが進み、バランス型ファンドだけが例外的に資金流入になっていたということになります。


ドイツの個人向け資産運用業界においては、富裕層を中心に投資一任口座でのファンド保有が主要なビジネスとなってきました。ここ数年では、投資家のコスト意識が高まっていることなどから、その中身がファンドからETFに急速にシフトしていると聞いていましたが、まさにこうした動きを反映したものと言えるでしょう。逆に、個別にポートフォリオをカスタマイズできる資産規模の投資家でない場合は、バランス型ファンドを中心に投資しているものと考えられます。ここ数年の日本の資産運用業界においても、バランス型ファンドやファンドラップをポートフォリオのコアに据える動きが広がりつつあります、ドイツの個人向け資産運用業界におけるアセットアロケーション運用の考え方は、日本に先行する動きとして注目されそうです。

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