2018年12月12日

国内投信市場でターゲット・デート・ファンド(TDF)の新規設定の動きが広がっています。TDFとは、退職時など目標時期を決め、年齢とともに低リスク資産の比率を高めていくタイプの商品で、ターゲット・イヤー・ファンドと呼ばれることもあります。前回のドイチェ・リポートHighlights Vol. 31(2018年11月8日号)「iDeCo(イデコ)の加入者100万人突破! すそ野広がるDC市場の現状と今後の課題」でも指摘したように、iDeCoの対象者拡大などで確定拠出年金(DC)市場のすそ野が広がる中、ターゲット・デート・ファンドを指定運用商品(あらかじめ指定するデフォルト商品)とする事例が出てきたことなどが背景にあります。以下、国内におけるTDFの現状から確認しておきましょう。

国内公募ターゲット・デート・ファンドの残高と運用本数の推移(2001年1月~ 2018年10月)

国内のTDFは2015年に入った頃から設定本数が大きく増えて、2018年10月末時点で107本と過去最高となっています。純資産残高は10月末時点で614億円と相場下落で7カ月ぶりに減少したものの、過去最高となった9月末の624億円に近い水準となっています。TDFはターゲットとする時期をずらすため設定本数が増加しやすいという特徴はあるものの、1ファンドあたりの残高で見ると6億円弱にとどまっており、依然としてその市場規模は限定的と言えます。

それでも、TDFの設定本数が増加基調にあるのは、厚生労働省資料「確定拠出年金における運用の改善について」などが米国の事例として挙げているように、米確定拠出年金(DC)市場のような成長に期待が高まっているためと考えられます。確定拠出年金法の改正においても、運用商品提供数の上限が35本に制限される一方で、TDFはシリーズでまとめて1本とカウントできるよう配慮されるなど、法制面でもその位置付けが明確化されつつあります。そこで、今回のドイチェ・リポートHighlightsでは、米投資信託市場におけるDCやTDFの市場規模をまとめたいと思います。

米ミーチュアル・ファンド(MMF含む)の口座タイプ別の残高推移とDCプラン・I RA経由の占める割合

米投資信託協会(ICI)は、ミーチュアル・ファンドの動向(残高、純設定額等)を月次で公表するとともに、「退職年金市場(Retirement Market)」の動向を四半期毎に公表しています。今年第2四半期(Q2)のデータが最新となりますが、米ミーチュ アル・ファンド全体の残高が18.9兆米ドルとなっているのに対し、401kなどDCプラン経由のミーチュアル・ファンド残高が4.6兆米ドル、日本のiDeCoに近いと言われる個人退職口座(IRA)経由の残高が4.3兆米ドルとなっています。DCプランとIRA経由を合計すると、全体の47.3%を占める8.9兆米ドルに達しており、こうした退職年金資産が米ミーチュアル・ファンドの残高拡大のけん引役になっていることがうかがえます。

DCプラン・IRA経由の米ミーチュアル・ファンドにおけるタイプ別純資産残高の推移

続いて、上のグラフで、DCプラン・IRA経由の8.9兆米ドルの内訳を見ると、米国株式型が44.2%(3.9兆米ドル)を占めるなど退職年金資産の運用の中心を担う一方で、株式と債券を組み入れたハイブリッド型(バランス型)ファンドの残高も急拡大しており、その比率は米国株式型に次ぐ23.7%(2.1兆米ドル)まで上昇しています。このハイブリッド型の残高拡大に大きく寄与してきたのがTDFとなっています。

DCプラン・IRA経由の米ハイブリッッド型ファンドにおけるターゲット・デート・ファンド(TDF)の残高とその割合


DCプラン・IRA経由のハイブリッド型は今年6月時点で2.1兆米ドルの残高がありますが、そのうちTDFは1.0兆米ドルと47.5%を占めています。また、上のグラフを見ると、TDFの比率が一本調子で上昇していることも確認できます。とりわけ、401kを中心とするDCプランにおけるTDFの比率はさらに大きく、DCプラン経由のハイブリッド型の残高1.2兆米ドルに対して、DCプラン経由のTDFは7,780億米ドルと65%を占めています。これは、企業型DCプランにおいて、従業員が自発的に商品選択を行わないことが背景にあるものと考えられます。

TDFが加速する分岐点としては、2006年8月に成立した年金保護法(PPA:Pension Protection Act)の存在が大きく、そこで、米401(k)に関する重要な改革が行われています。もともと、米401(k)にはTDFの採用が多かったのですが、従業員が投資対象について意思決定を行わなかった場合のデフォルト商品としての扱いについては、受託者責任の観点から議論が分かれていました。そういった理由から、従来、運用商品について意思決定を行わなかったプラン加入者は、MMFなど安定的な商品で自動的に運用されることが多くなっていました。そこで、この年金保護法は、30日以内に意思決定を行わないなど一定の条件の下で、TDFをデフォルト商品に採用することを認め、受託者責任を問わないことを明確化したのです。

日本のDC市場において、TDFをデフォルト商品とする動きが出始めているのは、こうした米国での成功事例を範としたものです。そういった意味では法制面でのサポートが必要不可欠であり、米IRAに近い性格を持つiDeCoでのデフォルト商品の運用よりも、企業型DCでTDFを採用する流れが本格化するかどうかが、国内のTDF市場拡大にとってより重要になりそうです。

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