このページを評価する

2021年6月

原題:Why ESG reporting requires scientific verification


信頼される報告基準と認識されるためには、科学的な検証に基づいており、ダブル・マテリアリティ(二重の重要性)*を採用していること、気候関連の財務リスクにとどまらず広範なサステナビリティ問題に対応していること、が求められます。

* 企業活動による財務的結果と、環境・社会的影響の両方、または、企業が環境や社会から受ける影響と企業が環境や社会に与える影響の両方を重視しようという考え方。これに対しシングル・マテリアリティでは、前者のみを重視する考え方。



要点


● 信頼される報告基準と認識されるためには、科学的な検証に基づいていること、ダブル・マテリアリティ(二重の重要性)を採用していること、気候関連の財務リスクにとどまらず、格差、人権、水リスク、生物多様性喪失といった、より広範なサステナビリティ問題に対応していること、が求められます。

● 国際的な気候変動イニシアチブのSBTi(Science Based Targets Initiative)は科学的検証に基づく財務分析に即した会計手法を提示していると評価できます。

● IFRS(国際財務報告基準)による現状のサステナブル報告提案は、シングル・マテリアリティを採用している点および、気候関連リスクに対象を限定している点から、不十分なものと言えそうです。

● EUタクソノミー、サステナブル・ファイナンス開示規則(SFDR)といったイニシアチブや他の地域とのより幅広い連携が必要です。

● IFRS(国際財務報告基準)財団の意見募集に回答した資産運用会社のうち、57%がシングル・マテリアリティ、つまり、財務的マテリアリティを支持したことは懸念材料です。金融業界が気候関連問題に本気で対応していないとの一般的な見方を定着させてしまうかもしれません。



概要


2021年3月に、私たちは「無秩序となっているESG報告の現状整理」を発表し、主要なESG報告のイニシアチブや重要なマイルストーンと、各国の気候関連報告の義務化に向けた取り組みについての概要を整理しました。今報告では、世界的に、金融当局がサステナブル報告を求める動きを積極化させる中で、ESG報告のフレームワークに求められる要件について考察しています。

とりわけ、EC(欧州委員会)は持続可能な開発及びサステナブル・ファイナンスに関し主導的役割を果たしています。さらに、G20、FSB(金融安定理事会)、IPSF(サステナブル・ファイナンスに関する国際プラットフォーム)などの国際的なフォーラムや米国をはじめとする国や地域も、こうした政策への積極的な取り組みを進めています。

例えば、2021年3月には米SEC(証券取引委員会)が、一貫性、比較可能性、信頼性のあるサステナブル報告、中でも気候変動に関する報告に関する意見募集を開始しました。また、IFRS(国際財務報告基準)財団も比較可能性、一貫性を持つグローバルなサステナブル報告基準の策定及び維持に関する公開草案を改定しています。

政府や基準策定主体に対しても、これまで以上に次のような積極的な役割が求められています:

● サステナブル報告作成費用の削減

● サステナブル情報開示に対する主として投資家からの要求への対応

● 報告すべきサステナブル関連情報の明確化

● グローバル基準の策定


サステナブル報告への関心が高まる中、特にインパクト投資やダブル・マテリアリティの観点(環境や社会問題によって企業が受ける影響だけでなく、企業活動が世界に与える影響についても重視する観点)から、以下の点は特に精査する必要があるでしょう。

1. 既存のサステナブル報告フレームワークは沢山ありますが、会計士や基準設定主体だけでなく、金融アナリストについても、通常はESGリスク評価に必要とされる十分な科学的素養を持ち合わせていません。このため、信頼性の高いしっかりとしたサステナブル報告基準の策定には、科学コミュニティによるより深い関与が必要となります。

2. 気候変動に関するサステナブル報告では、気候リスクを財務リスクに変換することは適切ではないため、科学的検証が必要です。また、シングル・マテリアリティとダブル・マテリアリティの間には大きな時間軸の隔たりがあり、ダブル・マテリアリティに基づかないサステナブル報告は中途半端なものといえるでしょう。


本報告では、ESG報告基準が抱える問題について掘り下げて考察しました。ここで得られた重要な結論は、サステナブル報告に関する会計基準のフレームワークは、科学的な検証に基づく必要があるということです。つまり、科学的な評価基準を欠いたままでは、アセット・マネージャーやアセット・オーナーは、気候変動に関するリスクと機会や、投資を通じた社会への影響に対する技術的専門性を欠いた状態が続くことになります。

Copyright © ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第359号
加入協会 日本証券業協会・一般社団法人投資信託協会・一般社団法人日本投資顧問業協会
一般社団法人第二種金融商品取引業協会
【当社を装った詐欺的行為にご注意ください。】