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2021年6月

原題:ESG outperformance: Not about one fact


カントリーベット(特定国への選択投資)やクラウディング(特定投資への殺到)、オーバーフィッティング(統計や機械学習における過剰適合)とは関係なく、いわゆる「ダークグリーン」のESG指数が地域を問わず長期にわたりアウトパフォームしています。こうした指数は、変動の大きな市場環境においてリスクを低減するという特徴を明確に示しています。指数レベルで高いESG評価に焦点を当てることで、特に新興国市場において超過リターンが得られており、これは学説とうまく合致していますが、アウトパフォームの要因の多くはより構造的なものなのです。

「ダークグリーン」のESG指数ルールは、問題活動への関与やコントロバーシー(ESGに関する諸問題)に基づく除外と、ESGレーティングの分類基準に基づく組み入れという、2つの主な柱から構成されています。私たちはこの2つの柱が補完的に作用し超過リターンを生み出すと考えており、この考えは学術研究でも広く支持されています。除外アプローチは、ベンチマークの構造的な変化により、マクロ経済的および個別銘柄レベルでのより高い安定性を提供しています。一方で、ESGレーティングに基づく組み入れは、特に投資スタイル別パフォーマンスの変化を背景に、投資におけるアウトパフォーマンスを生み出します。このようにESGは異なる側面を持つことから、ESG投資のアウトパフォーマンスを単に「1つの要因」に限定することは難しいのです。

今思えば、コロナ危機の局面におけるESG指数の強靭性は、既に存在していた動きが継続し、そしてある程度加速したものに過ぎません。しかし、多くの投資家や実務家の中では、ESG指数の高いパフォーマンスの理由が、ハーディング効果(群集心理に基づき同じ行動をとること)、セクター・バイアス、またはテールリスク回避によるものなのか、それとも実際にESGレーティングの高い企業の財務的な強みによるものなのか、意見が分かれています。

本レポートでは、2015年から2020年までの期間におけるパフォーマンスとリスクの寄与分析の手法を用いています。この分析は、過去の指数の保有銘柄とESGデータに基づき、株式市場におけるESG指数のアウトパフォーマンスの潜在的な要因の因果関係を検証します。本レポートでは、代表的な「ダークグリーン」ESG指数としてMSCI Low Carbon SRI Leaders指数(以降「LCSL」)を採用しています。この指数は、コントロバーシー(ESGに関する諸問題)における除外率を最小限としてトラッキングエラーを抑えたブロード指数と、集中度とトラッキングエラーの大きい限定的かつボトムアップ型の指数との間にある、バランスのとれた指数だと考えています。また、各国のESG普及度の違いの影響を低減すると見込んでいます。


ESGパフォーマンス:行動分析

コロナ危機は、環境、社会、ガバナンスのそれぞれの問題を同時に問いかけている点が特徴的です。LCSLのESG指数は2020年の大幅な下落局面を免れなかったものの、非ESG指数よりもかなり力強い回復を見せました。これは、ESG指数の優れたリスクリターントレードオフを強く示しており、ESGになじみのない投資家がESGを採用するための重要な要因となるでしょう。本レポートで取り上げた全ての市場において、確かなダウンサイド・プロテクションの効果が見られました。MSCI World指数とEM指数のLCSL ESG版は、通常指数よりもコロナ危機に関連した下落率が、それぞれ30bpsと90bps小さいという結果になりました。また、日本(290bps)と欧州(210bps)ではさらに顕著なプロテクション効果が見られました。

しかしながら、ESG指数と非ESG指数の年初来のパフォーマンスを比較すると、下落率の減少だけではパフォーマンスの全体像を説明できないことが分かります。実際、2020年11月末時点で、ESG指数と非ESG指数の年間累計パフォーマンスの差は、下落率の差が示唆するよりも大きく、ESG指数の回復がより顕著であることを示しています。ESG投資のいずれかの意義が包括的かつ信頼に足るかを判断するために、過去5年の期間で見ると、市場下落時のリスク低減と、広範な株式市場に対するアウトパフォーマンスという2つの要素は珍しい出来事ではないことがわかります。むしろコロナショックに至るまでの強気相場においてESG戦略が示していた傾向が、2020年にも継続したということです。

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