このページを評価する

2021年3月

原題:Making Sense of a Chaotic ESG Reporting Landscape


要点


● 企業による従来型の企業報告や利益追求姿勢は、環境破壊、人権侵害、格差拡大を招いています。

● 世界中の投資家が、投資資金の使途や世界への影響に関するより多くの情報開示を求める中で、時代遅れの企業報告の枠組みでは対応できません。

● ESGに関する協同と企業報告への世界の主要な取り組みと、気候関連の報告義務化に向けた世界的な潮流を検証します。



概要


企業報告のあり方が見直しを求められています。現在の企業報告は、経済学者ミルトン・フリードマンが1970年にニューヨーク・タイムズ紙に寄稿した有名な論説*1で述べた、「企業の唯一の社会的責任は利潤を増やすこと」という従来型の考え(株主資本主義)を満たすものです。しかし今日、このような従来型の企業報告や利益追求姿勢が、環境破壊、人権侵害、不平等の拡大を招いていることを私たちは知っています。世界の投資家は、投資資金がどのように使われ、世界にどのような影響を与えているかに関するより多くの情報開示を求めており、時代遅れの企業報告の枠組みでは対応できません。このような要求にも関わらず、投資家は、適切なデータの入手と顧客への提供において、大きな課題に直面しています。

現状では、様々なフレームワークに基づく報告様式が乱立している状況です。しかしながら、昨年には、以下のようなサステナブル報告統合に向けた動きで進展がありました。

- SASB(サステナビリティ会計基準審議会)、 IIRC(国際統合報告評議会)、GRI(グローバル・レポーティング・イニシアチブ)、CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)およびCDSB(Climate Disclosure Standards Board)の5つの基準設定団体による包括的な企業報告を目指した協調*2

- 4大監査法人と世界経済フォーラムのIBC(国際ビジネス評議会)によるESG報告の統一化に向けた取り組み*3

- 欧州委員会による、EFRAG(欧州財務報告諮問グループ)に対する欧州基準の迅速な策定、適用および実施に向けたタスクフォース設置の要請*4

- IFRS(国際会計基準) 財団によるグローバルで比較可能かつ一貫したサステナビリティ報告基準の策定、維持における役割の検討開始*5


主要なESG報告スタンダード


とはいえ、全体から見るとこうした取り組みはまだまだ不十分と言えるでしょう。企業会計基準委員会、各企業の監査委員会、監査法人はサステナビリティへの取組を加速することが求められています。ESG投資がグローバル・スタンダードを欠いていれば、利益相反やグリーン・ウォッシングといった問題にさらされる結果を招き、自身の投資を通じて人類のサステナブル課題の解決に役立ちたいという投資家の要望にも応えられなくなってしまいます。

今後の役割を定義する上で、資本の利用者と提供者の関係における第一の原理に立ち返って考えることが不可欠でしょう。社会は専門性、独立性、実効性を有する企業会計基準委員会がESG評価のフレームワークを制定することを求めており、それは可能な限りグローバルで包括的なフレームワークであることが望ましいのです。さらにフレームワークに基づいた企業報告を義務化し、サステナビリティの意味や情報源が適切であるかを理解するための時間やリソースを確保できない個人投資家を含めたすべての人々が、自由に情報へアクセスできることが必要です。

さらに、ESG報告の開示が改善されれば、投資家は基準の定義に関する情報収集といった業務から解放され、投資を通じ企業と関わるという本来の役割に戻ることができます。究極的には、1つのシンプルな会計基準で全てがカバーされ、ESGデータ提供業者がもはや必要ではなくなることが望まれます。データ提供業者に代わり、投資に必要な情報はESG投資家であるかどうかに関わらず会計基準さえ見れば全てが網羅できる、という状況です。

本報告書は2部構成となっています。第1章では主要な協同と企業報告のイニシアチブの概要を説明します。第2章では、主要なESG報告のフレームワーク、必要となる過程と、気候関連報告の義務化に向けた取り組みをしている国について説明します。


*1 New York Times (September 1970). A Friedman doctrine

*2 CDP (September 2020). Five global organisations announce a shared vision towards comprehensive corporate reporting. SASB: Sustainability Accounting Standards Board; IIRC: International Integrated Reporting Council; GRI: Global Reporting Initiative; CDSB: Climate Disclosure Standards Board

*3 WEF (September 2020). Measuring stakeholder capitalism

*4 European Financial Reporting Advisory Group (July 2020). Recommendations on possible European non-financial reporting standards

*5 International Financial Reporting Standards (Sept 2020). Consultation paper on sustainability reporting

Copyright © ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第359号
加入協会 日本証券業協会・一般社団法人投資信託協会・一般社団法人日本投資顧問業協会
一般社団法人第二種金融商品取引業協会
【当社を装った詐欺的行為にご注意ください。】