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2021年3月

原題:The paths of responsible investing in China and Europe


レポートの要約



本白書(ホワイトペーパー)では、ハーベスト社とDWS社が共同で、中国および欧州における責任投資の実施手法を比較しました。それぞれの地域が採用している手法の長所・短所を明らかにするとともに、責任投資の規模拡大のための提言を行いました。

本白書の第1章では、欧州連合(EU)および中国における責任投資の長所・短所を検証しています。第2章では、市場の成長を妨げる障害を緩和するための対策を検証し、第3章では、両地域におけるネット・ゼロ・カーボンの未来の実現に向けて、今回紹介した新しいフレームワークがどこに焦点を当てているかを説明します。

欧州の責任投資に対する伝統的なアプローチは、非中央集権型あるいは市場主導型と言えます。このようなアプローチは、責任投資をESGの様々な側面を網羅する裾野の広い分野として発展させ、多くの利点を生み出してきました。一方で、短所として挙げられるのは、混乱が生じさせやすい点や、中央集権的なアプローチと比較して進展が遅い点です。さらに、中国と比較すると、アセット・オーナーやアセット・マネジャーの果たすべき責任の定義も異なる形で発達しました。

中国では、グリーン・ファイナンスに関する主な規制対象は銀行セクターです。そのため、中国の資産運用会社の責任投資の意識やスチュワードシップの実践は比較的遅れており、ESG投資に関する方針を定めて運用プロセスへ組込んでいる運用会社は全体の約16%にとどまっています*1。一方、欧州では、非中央集権型アプローチを通じてではあるものの、アセット・オーナーとアセット・マネジャーにより多くの責任が課せられており、より成熟した分野に発展したことを示しています。

どちらのアプローチにも長所があります。中国における責任投資の実践は急速に進展している一方、全ての投資家が中国におけるタクソノミー(分類方法)に賛同している訳ではありません。例えば、中国では「クリーン・コール」(燃焼物から有害物質を除去したクリーンな石炭)も「グリーン」に分類していますが、世界の投資家が中国のグリーンボンドに投資を行う際の大きな障壁の一つとなっています。一方、欧州における多角的な取り組みは長所と言えますが、その分進展は遅れがちです。多角的であるが故に共通基準の制定が遅れており、消費者、政策立案者、アセット・オーナーそしてアセット・マネジャーが混乱する要因となっています。また、定義の曖昧さが「グリーン・ウォッシュ」(環境に優しいことを詐称する行為)を招き、逆に足かせとなっています。

現在のフレームワークでは投資家に責任が偏っていますが、投資家は金融市場の専門家ではある一方で、科学やサステナビリティに関してはそれほど専門知識を持ち合わせていないのが実情です。例えば、科学的根拠に基づくサステナブル会計基準が存在しなければ、投資家は、規制下にないESG関連データを基に投資判断を行っていかなければなりません。これらの情報はリスクを理解する助けにはなるかもしれませんが、リスクをどう解釈するかの指針がないのです。中国においても、情報開示を強制する中央集権的なアプローチに対して懸念や反発がありますが、データの一貫性と比較可能性を求める投資家にとり、重要な論点です。

我々の分析の結果、いずれのモデルも長所があり、最良のアプローチの特定は容易ではないものの、健全な比較分析は今後の方針を理解する上で有効です。両地域ともに、「ダブル・マテリアリティ」(財務情報におけるマテリアリティではなく、企業のサステナビリティ課題が企業価値に与える影響および社会・環境に与える影響の観点での2つのマテリアリティ)を示すために開示要件の強化が求められます。また、ESGインパクトを重視する投資家の要求に応えるためには、より優れたESG投資商品分類とエンゲージメントの強化が必要です。

*1 Asset Management Association of China (March 2020). China asset management industry ESG investing survey report (2019)

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