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2017年1月11日

「クロッキーモデル」について教えて下さい。

「クロッキー(CROCI)モデル」は、国・地域、業種の枠を越えて、「企業の真の価値」を見出し、同じ投資指標を用いた、シンプルな株式の比較評価、銘柄選択を可能にすることを目指し、ドイツ銀行グループが1996年に独自に開発した株式分析手法です。「クロッキー(CROCI)」は、『投下資本に対する現金収益比率』を意味する英語の『Cash Return on Capital Invested』の頭文字をとったものです。その最大の魅力は、一般的な株式分析手法では見えにくい真の割安銘柄を見出すことを可能にしていることでしょう。

当モデルが分析対象とするのは、全世界の大型株、約800銘柄です。国や地域ごとに異なる会計基準、企業ごとに異なる会計方針等に沿って作成、公表されている企業の会計データを、一貫した客観的なルールに基づいて、より経済実態に沿った緻密な投資用データに構築し直します。その上で、「エコノミックPER」等の独自の投資指標を計算し、それらを用いて、投資戦略の構築を行います。

「クロッキーモデル」に基づく数々の投資戦略は、ファンド等の投資商品として、日本を含む世界中の幅広い投資家に受け入れていただいており、私たちは大変誇りに思っています。
※「クロッキー(CROCI)」は、ドイツ銀行の登録商標です。

「エコノミックPER」とはどのような指標ですか?通常のPERとの違いは?

株価の割安度を測る指標として一般的に広く活用されている「PER」(Price Earnings Ratio、株価収益率。以下、「会計PER」)は、会計データをそのまま用いて算出されているため、国・地域、業種を越えた銘柄の割安度比較に用いるのは困難です。

先ほど述べた通り、「クロッキー(CROCI)モデル」においては、まず企業が公表する会計データを投資用のデータに再構築し直すという作業を行います。そして、収益力の高い企業の価値は高くなるはずだという会計PERに基づく投資の考え方はそのままに、その投資用のデータを用いて、より企業の経済実態を反映した「進化したPER」である「エコノミックPER」という独自の投資指標を計算し、活用します。

ここで、企業の会計データの再構築プロセスの一例をご説明しましょう。一般的に医薬品メーカーにおいては研究開発費や広告宣伝費が比較的多くなっています。これらは、通常の会計処理では当期の「費用」として計上されるため企業の当期純利益を押し下げ、当該企業が発行する株式が割高であると判断される要因になります。「クロッキーモデル」においては、これらの出費を将来収益を生むための投資ととらえるため、費用ではなく資産として計上し、定められたルールに従って減価償却を行うのです。そのため、研究開発費や広告宣伝費が増えても、必ずしも当期純利益を下げる要因とはならず、その企業の株価が割高だと判断される要因になりません。

また、減価償却を経済的な観点から決めた一貫したルールで行うことも重要です。例えば航空会社が保有する航空機では、各国毎に定められた償却年数に大きな開きがあります。例えば、12年と定められているドイツと、25年と定められている英国では減価償却期間に約2倍の開きがあり*、減価償却期間中は償却年数の短いドイツの航空会社の方が毎期の減価償却が大きく、当期純利益は少なくなる、というように、同じ航空会社であっても、国による会計ルールの違いだけで会計上の利益に差が付いてしまいます。しかし、「クロッキーモデル」では一貫したルールで減価償却を行うため、より均質なデータを構築でき、企業の横比較がし易くなるのです。(図表1)

「クロッキーモデル」では、このようにして再構築されたデータに基づいて算出された「エコノミックPER」により、会計PERでは割安に見えるけれど本当は割高な銘柄への投資を回避するとともに、会計PERでは割高に見えるけれど本当は割安な銘柄を見出すことを可能としています。*2014年10月時点

 

図表1:運用プロセス

「クロッキーモデル」が誕生した背景を教えて下さい。

「クロッキー(CROCI)モデル」は、ドイツ銀行グループの株式調査部門で誕生しました。その背景は、1999年1月の欧州通貨統合によるユーロ導入前の1990年代半ばまで遡ります。当時は、例えば、ドイツ企業はドイツの証券取引所に、フランス企業はフランスの証券取引所に、イタリア企業はイタリアの証券取引所に、それぞれ自国通貨建てで上場されていました。そして、それらの企業の会計データは国毎に異なる会計ルールに基づいて作成されていましたが、当時の投資家は、仮に会計データやそれらをそのまま用いた会計指標の限界を認識していたとしても、主にそれらを用いて株式を取引せざるを得ないのが実情でした。

そのような環境の中、ドイツ銀行グループの欧州株式調査チームは、欧州各国の企業の株式を同じ投資指標でシンプルに比較、分析できる手法の創造を目指し、動き出しました。

そして、1996年、独自の株式分析手法「クロッキーモデル」を開発し、欧州各市場に上場する企業の株式分析からスタート、その後、世界の大型株へと対象を拡大させました。

「真の投資家」や「真の企業価値」とは、どのような考え方ですか?

私たちは株式市場の参加者は主に二つのグループに分類されると考えています。

まず一つ目のグループは「投機家」です。彼らは日々流れる、ありとあらゆるニュース、情報等に基づいて、株式を買ったら高値で売るタイミングを常に伺い、短期的に利益を上げることを目標としています。

もう一つのグループは「真の投資家」で、「株式を買うことは企業の一部を買うこと」だと考える人々です。彼らが投資にあたり拠り所にするのは、企業が有価証券報告書等で発表する会計データです。そして、そのデータに基づいて、投資対象企業の資産構成や収益性等を様々な角度から分析し、「真の企業価値」を見極めた上で投資を行うのです。

この「真の投資家」に「真の企業価値」を見極めるフレームワーク(枠組み)を提供しようということが、「クロッキー(CROCI)モデル」の目的であり、原点ともいえるでしょう。

クロッキー・チームについて教えてください。

クロッキー(CROCI)・チームは、英国を中心として、米国、フランス、豪州、インドに配置された財務分析担当の専任アナリストを中心とした約60名のチームです。ここで皆さんにご理解いただきたいのは、一見すると機械的に投資対象銘柄を選定・投資する手法に見える「クロッキー(CROCI)モデル」が、実際には徹底的な財務分析に基づく手法だということです。

新しい企業を投資ユニバースに加える際には、徹底的に企業の会計データと向き合います。「真の投資家」が求める「真の企業価値」を見極めるためは、決して近道をせず、じっくりと企業の財務情報を掘り下げ、企業の会計データの再構築を行うのです。

そして、検証の結果、その企業がそもそも投資対象としてふさわしくないと思われる場合には、最終的には投資ユニバースに加えないと判断することもあります。このように、当チームは徹底して企業財務分析を行うチームであり、それが最大の特徴だといえるでしょう。

「クロッキー・セクター戦略」とはどのような投資戦略ですか?

「クロッキー(CROCI)モデル」に基づいた主な株式投資戦略のラインアップの一つに、「クロッキー(CROCI)・セクター戦略」があります。当戦略の投資対象は、S&P 500、STOXX Europe Large 200、TOPIX100の各指数構成銘柄である米国、欧州、日本の金融セクター及び不動産セクターを除く企業です。

ポートフォリオ構築のプロセスはいたってシンプルです。「クロッキーモデル」で割安と判断される3つのセクターを選択し、さらにそれぞれのセクターで割安と考えられる10銘柄程度を選出し、合計で30銘柄程度に投資します。(図表2)すなわち、まず「割安と見られるセクター」を選択し、さらにその中で「割安と見られる銘柄」を選択するという、二重のフィルターで、投資する株式を厳選するプロセスとなっているのです。

また、その運用プロセスにおいて、国・地域の配分は一切考慮しないこと、3ヶ月毎に投資セクター及び投資銘柄の見直しを行い、必要に応じてそれらの入れ替えを行うのも当戦略の大きな特徴だといえるでしょう。

 

図表2:クロッキーモデルによる分析例

「クロッキー・セクター戦略」の魅力について教えて下さい。

割安で魅力的なセクターの厳選銘柄に投資を行う「クロッキー(CROCI)・セクター戦略」は、「クロッキー(CROCI)モデル」の独自性が非常に活かされた戦略だといえるでしょう。

「クロッキーモデル」を活用すると、前述したように、国を越えた割安度の比較が可能になるのみならず、真の割安セクターや真の割安銘柄が見えてきます。例えば、会計PERに基づくと、情報技術、ヘルスケア等の成長セクターがほぼ常に割高に見えるなど、セクター毎の割安度の見え方に偏りが生じがちです。しかし、「クロッキーモデル」で用いるエコノミックPERに基づくと、前述の通り研究開発費を当期の費用として処理せず、資産として計上して複数年で減価償却することなどにより、直近でもこれらの成長セクターが割安なセクターとして浮かび上がってくるなど、過去の分析においてはそのような偏りが生じていないのです。

「クロッキー・セクター戦略」は、このように国やセクターを越えた割安度の比較が行い易くなったエコノミックPERの特徴を最大限に生かしたグローバルなセクター・ローテーション戦略です。

最後に、日本の投資家の皆様にメッセージをお願いします。

「クロッキー(CROCI)モデル」はデータベース上の全企業をくまなく精査しています。言い換えれば、キャッシュフローの源泉をしっかりと理解している企業にのみ投資をしており、ビジネスモデルや資産基盤について少しでも疑念があれば、データベースには入れません。私たちはこのデータベースをとても誇りに思っています。

当モデルは約20年前に開発され、また約12年前から実際に投資をしていただいていますが、「クロッキーモデル」により割安として判断された企業はこれまで一社も破たんしていません。2008-9年にかけてバリュー戦略のポートフォリオの多くが軒並み大きな打撃を受けていただけに、私たちの強みをより分かっていただけると思います。

金融危機の際に「クロッキーモデル」のポートフォリオにこのような問題が起きなかったのは、わずかなリスクやテールリスクを常に気にかけていたからです。

「クロッキーモデル」は無謀な成長戦略を立てている企業より「真の価値」のある企業に投資をしています。言い換えれば、急成長を遂げている企業へのエクスポージャーを取るより、 損失を出す企業を避けることを心がけています。これは「クロッキーモデル」の最も重要な哲学であり、長年にわたり良好なパフォーマンスを保ち続けられた理由だと考えています。

当モデルは1998年のアジア通貨危機、2000-2002年のITバブル崩壊、2007-2008年の世界金融危機と、その後の欧州債務危機を乗り越えました。景気サイクルには危機が付き物であるとは考えており、「クロッキーモデル」は今後の危機にも対応できると考えております。マーケットが上昇していれば、パフォーマンスはおのずと良くなります。最も困難なことは危機を乗り越えることであり、それこそが「クロッキーモデル」の大きな強みの一つと自負しております。

ドイチェ・アセット・マネジメント  クロッキー・チーム 責任者  フランチェスコ・クルト (Francesco Curto)
ドイチェ・アセット・マネジメント
クロッキー・チーム 責任者

フランチェスコ・クルト
(Francesco Curto)

1998年にドイツ銀行グループに入社以来、一貫してクロッキー・チームに所属し、2009年より責任者を務める。

 

動画

2017/01/18/ | 02:08分
クロッキー(CROCI)モデルのご紹介


クロッキービュー:2017年の株式相場見通し

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