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2017年8月4日

投資家の皆さまへ

経済環境は、ほぼ申し分ない


2017年前半、世界経済は極めて堅調な推移を示しました。後半にかけても同様に良好な状態が続くものと予想されます。各国中央銀行は緩和的な金融政策を継続しており、数年振りに、新興諸国と先進諸国の経済が同時に上振れすると当社では見込んでいます。世界は引き続き「ゴルディロックス経済*」、すなわち過熱感がなく低迷もしていない適度な状態、低いインフレ率と低い金利の元で緩やかに成長する状態へと向かっていますが、こうした環境は特に株式市場にとって追い風となります。

しかしこのように理想的な状況にも、やはりマイナスの側面はあります。一つは、ほぼすべての資産クラスのバリュエーションが過去最高水準にあることです。加えて、資産インフレ、すなわち資産価格の上昇が、インフレの主要要素である賃金の押し上げにつながっていない、という事実が挙げられます。企業にとって好都合なこうした状況も、賃金を受け取る側にとっては何ら喜ばしいことではありません。このような賃金労働者の不満は、現在投資家から見て想定される以下の2つのシナリオを通じて、ゴルディロックス経済を脅かす要因ともなります。一つは「低い労働コストのおかげで、企業の収益率と株価バリュエーションは好調に推移するが、社会的な軋轢が生じるリスクを伴う」シナリオ、もう一つは、「(労働者の不満を受けて)賃金の伸びは加速するものの、企業の収益率にマイナスの影響が及ぶ」シナリオです。ただし二つ目のシナリオの場合、賃金労働者の心理の好転と購買力の向上を背景に企業の売上が拡大し、労働コストの上昇を一部相殺する可能性はあります。

エマニュエル・マクロン氏のフランス大統領選出を受けて強い高揚感が広がるなかでも(当社が現在、米国より欧州を選好する主な理由がこれですが)、今回の選挙では、賃金労働者の不満を背景に、社会党と共和党という二つの主流政党が存在感を失った事実を私たちは見過ごしてはいません。英国の欧州連合(EU)離脱決定やドナルド・トランプ氏の米大統領選勝利でも、不満を募らせた賃金労働者が主要な役割を果たしたことは明白です。従って、当社としては今後も引き続き、政治的な潮流を注視していく意向です。ただしリスクは明らかに欧州から米国へとシフトしており、この理由もあって、当社ではユーロの対米ドル相場の見通しをユーロ高方向に変更しました。但し欧州を覆う高揚感は行き過ぎではないかとの懸念もあり、変更後のユーロ相場予想は、足元の水準と大差ないものとしています(以前の予想1ユーロ=1.00米ドルから1.10米ドルに変更)。同時に当社では、米国のトランプ政権について、見切りをつけるには時期尚早と考えています。トランプ氏は未だ一定の支持を得ており、極端に批判的な見方は広がりにくい状況にあるからです。またトランプ氏の支持者はいずれ現在の政治的現実に慣れきってしまい、政府がごく小さな成果を上げただけでも高く評価する可能性があります。株式市場でも状況は同じです。従って投資家は今年後半も引き続き、様々な期待の裏にある要因を見定め、適切な判断をしていくことが重要となります。

「* ゴルディロックス経済」は、市場にとって理想的な経済状態を指す言葉です。童話「3匹のくま」の中で主人公「ゴルディロックス」は3杯のスープを口にしましたが、そのうちの1杯のみが、熱過ぎず冷め過ぎず、適温のスープでした。このスープの状態を経済に例えたものが「ゴルディロックス経済」であり、過熱することも極端に冷え込むこともなく、インフレのリスクもリセッション入りのリスクも伴わない経済状態を意味します。

 

Stefan Kreuzkamp Signed

 

ステファン・クロイツカンプ チーフ・インベストメント・オフィサー
ステファン・クロイツカンプ,
チーフ・インベストメント・オフィサー


賃金の伸びを伴わない資産価格の持続的な上昇は、投資家にとっても悩ましい問題となりそうです

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