2019年4月12日

CIOビューセミナーHighlights

2019年3月某日、DWSグループのアジア太平洋地域チーフ・インベストメント・オフィサー(CIO)兼新興国株式運用部門グローバル責任者であるショーン・テイラーが来日し、2019年の市場見通しとDWSの投資戦略について語った。

アジア太平洋地域チーフ・インベストメント・オフィサー(CIO)兼 新興国株式運用部門グローバル責任者 ショーン・テイラー

DWS グループ アジア太平洋地域チーフ・インベストメント・オフィサー(CIO) 兼
新興国株式運用部門グローバル責任者

ショーン・テイラー(Sean Taylor)

香港在勤。21年に及ぶ業界経験を経て、2013年にDWSに入社。それ以前は、GAM社(在ロンドン&ドバイ)におけるインベストメント・ディレクターやソシエテ・ジェネラルにおける世界株式及び新興国株式の運用責任者などを務めた。1994年にファンド・マネージャーとしてCapel Cure Myers社でキャリアを開始。
マンチェスター・ビジネス・スクール卒(MBA)
テイラーが率いるDWSグループの新興国株式運用チームは、その高い運用能力が評価され、ドイツ語圏における著名なアワードである「スコープ・インベストメント・アワード」を2018年11月に受賞しました。

2019年の世界経済の見通し

2018年と比べて市場環境は変化していますが、我々の全体的な見解は変わっておらず、2019年も世界経済は堅調な成長が続くものと見ています。我々の予想する2019年のGDP成長率は世界全体で3.5%と、去年の予想からは若干低下したものの、2020年予想も同じく3.5%と依然としてポジティブです。米国の予想GDP成長率は2019年で2.6%、2020年は2.1%と若干の減速を予想します。

先進国 Vs 新興国のGDP成長率予想

新興国に目を向けると、2019年は4.6%、2020年は4.8%のGDP成長率を予想しており、中でもインドの高さ(2019年7.8%、2020年8.0%)は特筆すべきものがあります。懸念材料として今年春のインドの総選挙が 挙げられますが、それを差し引いてもインドの経済成長は新興国の成長を牽引する重要な役割を果たすと考えて います。


各国・地域の中央銀行の今年の 金融政策については、米連邦準備理事会(FRB)は年後半に1回の利上げを行うと予想します。*注 一方、 欧州中央銀行(ECB)と日銀の 利上げは無いと考えています。また、中国人民銀行は景気刺激策の 一環として利下げを行う可能性が あるでしょう。


地域別見通し

米国

米国株式市場は2018年の10-12月期に大きく下落し、その後急回復を見せました。この時期、まず景気先行指数が大きく下がり始めました。その理由としては、米国の利上げ懸念、米中貿易戦争、ヨーロッパの景気減速懸念などが考えられます。これまでの歴史を振り返ると、10月のように株価が大幅に下落した場合、通常金利は引き下げられる可能性が高まりますが、当時中央銀行は利上げについて議論しており、これが株価を大幅に下落させる一因となりました。

今年1月に入り、FRBは利上げ回数を減らす方向にスタンスを変更しました。同じタイミングで、米中の貿易戦争等にもポジティブな兆しが見られるようになり、また、米国株式市場が売られすぎた側面もあったことから、マーケットは上昇しました。いずれにせよ、我々は米国の利上げサイクルが終盤に近づいており、2019年は年後半に1回のみ利上げが行われると予想します*注

欧州

欧州の動向にも多くの投資家が注目しており、特にドイツが景気後退(リセッション)入りするのでは、との見方に焦点が当たっていますが、リセッション入りはないと考えています。去年はBMWのリコールや排ガス不正問題などが明るみとなり、自動車セクターに激震が走ったことで、企業収益に密接につながる自動車販売台数が伸び悩みました。自動車セクター全体の不振がドイツのGDPの下押し圧力となりました。加えて、昨年夏のドイツの酷暑が国民の消費パターンに影響を及ぼした事も、ドイツのGDPを押し下げた一因と考えられます。ただし、これらの要因は一時的なものであり、リセッション入りを裏付けるものではありません。

欧州の他の国を見ると、イタリアは政治混乱と借り入れコストの上昇、財政懸念が経済の足かせとなり完全にリセッション入りしています。フランスは昨年末から続く黄色いベスト運動が懸念されますが、これにより実質的なGDPが押し下げられることはないでしょう。ECBは年内は主要政策金利を据え置くと見ており、今後も欧州経済を下支えするために、「慎重で・我慢強く・粘り強い」対応を継続するものと見込まれます。

新興国

新興国については、次にあげる5つのポイントから強気の見方をしています。①FRBによる米国の利上げは年内に1回と見込まれ*注、利上げが落ち着けば新興国に投資マネーが戻ってくると考えられる点。②米ドル高が収まりつつある点。③中国が減税を中心とする景気刺激策をとる事で国内の経済を下支えすると見られる点。④米中貿易戦争の一幕が終わろうとしている点。⑤コンテージョン(危機の伝染)の終息。前述のような、これまで新興国内に派生していた様々な問題は、今年終焉の兆しが見えそうです。以上の5つのポイントを踏まえて、地域別新興国の状況を見ていきましょう。


アジア

中国をオーバーウェイトとしています。中国は2019年、6%の経済成長を見込んでいます。これまでより低い数字ですが、中国はより質の高い成長へと移行しています。中国は過去2年間、シャドーバンキングの規制など、金融制度及び債務の健全化を図る一方で、減税や税制改革などにより付加価値の高い産業の育成に力を注いできました。メディアを賑わせているファーウェイやZTEは過去2年の特許申請件数がそれぞれ世界1位2位であり、中国はかつての「世界の工場」から脱却し、バリューチェーンにおける地位を向上させているのです。ただし、このように中国の企業が競争力を高めていることが、知的財産権やテクノロジーをめぐる米国との貿易戦争を長期化させる要因となる可能性があるため、現在はより一層選別的な投資が求められる状況です。

我々は、タイもオーバーウェイトと見ています。同国は経常収支が黒字で、中国から多くの観光客を受け入れている影響で消費も活発です。インドインドネシアはニュートラルと見ています。特にインドは長期的に新興国の潜在成長性を牽引する非常に重要な役割を果たすと考えています。ただし、どちらの国も2019年は選挙を控えていることが、リスク要因となると考えます。

中南米

中南米では、ブラジルをオーバーウェイトとしています。ブラジルの2018年のGDP成長率を見ると、新興国の中では低成長でしたが、株式市場のパフォーマンスはよく、今後企業収益の改善余地が見込まれます。昨年選出された、ボルソナロ現大統領は前政権の財政改革路線を継承しています。ブラジルにとって財政健全化は目下の課題であり、今後も年金改正法案をめぐる動きが通貨レアルの変動要因として考えられます。

メキシコはアンダーウェイトとしています。同国の北米自由貿易協定(NAFTA)をめぐるアメリカ・カナダとの関係が市場に与える影響が不透明であることがその理由です。

ロシア

ロシアはオーバーウェイトとしています。同国はネガティブなニュースがあふれており、それによってロシア株式はかなり売られすぎているため、非常に割安であると考えています。実際には、ロシアのファンダメンタルズは良好で、成長は安定しています。原油価格(WTI)も60米ドルまで上昇すると見込んでおり、ロシアはその恩恵を受けると見ています。それではなぜ、これほど割安なのでしょうか?

その答えは、ひとえに米国の経済制裁が原因として挙げられます。経済制裁が近い将来に解除される可能性は低いでしょうが、長期的に制裁が解除されることが織り込まれれば、市場も落ち着きを取り戻し、現状のファンダメンタルズに対する売られ過ぎの巻き戻しが起こる可能性は十分にあると考えます。

まとめ:市場環境を踏まえた投資戦略 ~引き続き「選別的な投資」がキーワード、ESGを取り入れた投資にも注目~

2018年はFRBの利上げが新興国に波及し、さらに米ドル高もあって新興国株式が大幅に下落する状況となりました。ただ、国や地域の投資先を厳選し、選別的に投資をすることで新興国でもリターンをあげることが可能であると考えています。とりわけ我々が選好する資産クラスは株式です。欧州や日本では金利が低く、ドイツはマイナス金利が続いています。安全資産でリターンをあげるのが非常に難しい環境下では、株式が投資妙味のあるアセットクラスではないかと考えます。

一方、アジアの社債も注目されています。米国でもハイ・イールド債券に人気がありますが、アジア企業のバランスシートは米国企業に比べ健全です。また、実はアジア社債の主たる投資家はアジア人で、これはつまりアジア以外の資本に依存しないでよい状況だと言え、このことはアジア社債への投資にとってはポジティブな点です。

我々がアジアを魅力的な地域として考える背景は、「教育」と「観光」にあります。アジアでは近年教育の質が著しく向上しており、教育によって質の高い人材を育てることは現地の企業にとってもメリットが大きいと考えます。また、今後も安定した増加が見込める中国人観光客がアジアの他地域に与える消費の活性化の影響も大きいと見ています。

最後になりますが、投資をする上での構造的な変化が起きています。「サステナブル(持続可能)」な未来へ向けて、ESG(環境・社会・企業統治)投資への注目が高まっています。実際に海外では、長期的にサステナブルな投資をするとリターンを改善させる可能性があるという調査結果も出ています。我々は、独自のシステムである ESGエンジン をご提供し、株・債券に投資する際に企業のESGに対する取り組み方を銘柄選択に反映させ、サステナブルなリターンの追及に取り組んでいます。このトレンドの大きな変化は今後の投資のあり方を変えていくと見ており、DWSは投資家の皆様のサステナブル投資の一助となれるよう注力して参りたいと考えています。

*注:(米国の利上げ予想について)セミナー実施時点での見解です。現在CIOオフィスでは、2019年の米国の利上げは見込んでいません。(4月3日時点)

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