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CIOビュー 2021年12月号

投資家の皆さまへ


2022年は金融政策依存を解消できるほど好調か?


2022年は、懸念されているほどインフレそのものは悪化せず、世界経済は潜在成長率を上回る成長を遂げるでしょう。ただし、金融政策の下支えが縮小することで市場は不安定になる可能性があります。



現在のインフレ率は一時的なものでしょうか、それとも長期化する可能性があるのでしょうか。これは現在資本市場でよく問われている質問です。また、2022年には、「資本市場のバブルは一時的なものか、それとも長期化するのか。」という疑問も出てくるでしょう。

これは重要な質問です。平均をはるかに上回るバリュエーションである現在の市場環境においてはインフレに限らず、投資家は何が一時的で何が持続可能なのかを考える必要があるためです。年初来9カ月で企業収益は前年比約50%増加しました。これを受けて、株主はこの1年で平均20%以上1ものリターンを得ることが出来ました。このような結果となったのは、企業がコスト上昇、特に商品のコスト上昇を消費者に容易に転嫁できた一方で、全体的には賃金が上昇していないためです。そのため、S&P500種指数の構成銘柄企業の収益率は、13%という史上最高水準となりました2。景気拡大のピークであった2007年でさえも、企業の収益率は10%に達していませんでした。

それに加えて、公共部門の膨大な支出があります。現在の見通しでは、米国政府は2020年から2022年の間に、平均して税収を国内総生産(GDP)の11%分上回る金額を支出することになりそうです3。このような水準の財政刺激策は、通常はどちらかというと戦時の状況でみられるものです。

そして金利の問題もあります。10年物米国国債の利回りは35年にわたって低下しており、いまだにその状態から抜け出せずにいます。期待インフレ率調整後の実質金利は、ほぼ2年間にわたってマイナスです。このような状況のどれが一時的で、どれが持続するといえるのでしょうか。
1年を少し振り返ってみましょう。現時点で、2021年は特に株式といったリスク資産には良好な1年でした。債券についてはそうでもありませんでした。リスク資産の価格上昇について驚きはありませんでしたが、上昇率については予想を上回りました。特に、サプライチェーンの問題、中国の規制改革、繰り返し起きる新型コロナ感染拡大、インフレ率の急上昇といったさまざまな障害が1年を通してあったためです。

このような問題は2022年にも引き続き残るでしょう。ただし我々はその大半は上半期の問題になると考えています。よって我々は、大半の国がまた来年も潜在成長率を上回ることになると予測しています。具体的には、ユーロ圏の経済成長率は4.6%となり、2017年以来初めて成長率4.0%の米国を上回ることになるでしょう。中国の成長率は「わずか」5.3%で、インドは7.5%になると予測しています。

このポジティブな見通しは、インフレ率が米国とユーロ圏で3%未満に下落するという我々のインフレに対する予測に支えられています4。また、原油価格やドイツにおける税制といったベース効果に加えて、供給の回復に伴って需給のバランスが改善することも、下半期のインフレ率下落予測の背景となります。これによって中央銀行のアクションに対する圧力は若干弱まると我々は考えています。我々は、米連邦準備制度理事会(FRB)が債券の購入(ネット・ベース)を2022年半ばに停止し、その後2022年末までに1回利上げすると見ています。欧州中央銀行(ECB)については、2022年中に債券購入を縮小するものの、金利はおそらく2023年も現状の低い水準に据え置くでしょう。新型コロナからの反動がおさまるため、いずれにせよ2023年までに経済成長率は低下するでしょう。ユーロ圏の2023年の経済成長率はわずか1.6%、米国は2.8%になると予測しています。よって世界経済は、我々が2014年に「タートル・サイクル」と呼んだ穏やかな成長の基調に立ち戻ることになるでしょう。しかし、今回の経済成長はおそらく若干の高いインフレ率を伴うことになるでしょう。

この経済シナリオが資産クラスに与える最も重要な意味は、我々が急激な利上げを予測していない、ということです。金融市場のベンチマークである10年物米国国債の利回りは、2022年末までに2%までしか上昇しないと我々は考えています。実質金利は明らかにマイナス圏内にとどまるでしょう。つまり、適度なインフレに対する備えにもなる株式をはじめ、リスク資産の環境は引き続き良好だということです。 我々は価格決定力の強い企業に注目しており、このような企業の株価は特に順調に推移するとみています。平均すると一桁台半ばのレンジで株価が上昇する余地があると見ています。そうなると、株価上昇は2022年で連続4年になります。100年に1度のパンデミックといわれるコロナ禍においても株価上昇が維持されることになるのです。

景気の上昇基調は手応えがあるものの一時的であることから、我々はグロース株と景気敏感性の高いバリュー株の組み合わせに引き続き注目しています。つまり、地域的にバランスのとれた分散ということになります。アジアの株式市場はこの1年弱含んでいましたが、2022年には再び市場全体との差を縮める可能性があります。ただし、特に上半期に、市場の混乱を招くような追加的なニュースが中国から出てくる可能性があると考えています。米国はグロース株のセグメントが多い傾向があるのに対して、欧州、日本、アジアはむしろ景気循環株に代表されます。後者には資本財銘柄も含まれていますが、その中には脱炭素政策において勝ち組になる企業もあると考えます。カギとなる言葉は「クリーンテクノロジー」です。グラスゴーの気候サミットに大きな関心が払われたことからも示されるように、サステナビリティ(持続可能性)という議題の重要性がますます高まっていくでしょう。このサミットについて、我々は期待以上の成果が得られたものの、まだ十分ではない、と結論づけています。

今まで述べてきた経済環境は一定のオルタナティブ投資にも引き続き好材料となります。インフラは価格上昇に対する適応力が高いため投資家を惹きつけています。また、不動産にも投資妙味のあるニッチな分野が多く出てきています。物流に加えて、特に大都市近郊の手ごろかつサステナブルな住宅といった分野を挙げることができます。

債券に関しては、2022年には選択的にならざるを得ません。金利上昇環境にあって、特に年限の長い国債には引き続き厳しい年になると我々は見ています。また、年限の短い国債も含めて、ボラティリティは特に2022年の上半期には2021年下半期と同じような状態が続くでしょう。中央銀行が政策ステートメントで示した利上げの意図を市場が試すようになるためです。

現時点でプラスのリターンを生んでいるのが米国のハイ・イールド債券だけであることからわかるように、社債のパフォーマンスはこの1年冴えませんでした。しかし2022年には再び数字が上向くと我々は予測しています。経済環境、非常に低いデフォルト率、需給バランスの改善などによってこの流れが支えられるでしょう。また、中国における不確実性の高まりや、一時的な米ドルの上昇によってコモディティ価格上昇からの恩恵が一部相殺されることになるものの、新興国債券にとっても再び良い1年になるでしょう。

ただし、2022年上半期中に米ドル上昇の勢いが失速すると我々は考えています。現在、ユーロ圏との金利差から市場は非常に米ドル寄りになっています。ECBの発言がハト派的である一方、市場は2022年末までのFRBによる3回にわたる利上げを織り込みつつあります。我々はあまりタカ派的ではなく、よって今後12カ月間の為替レートは1ユーロ=1.20米ドルを予測しています。

まとめると、2022年は特にリスク資産への投資に良い1年となるでしょう。実際、資産に対する大きな脅威となるのは、政治や経済ではなく市場そのものになるであろうと我々は考えています。中央銀行による段階的な流動性の引き下げや経済成長の低下に対して株式市場はどのように反応するでしょうか。ボラティリティが高まる可能性があります。インフレが落ち着く兆候がまだ見られないようであれば、上半期にはこのインフレが引き続き不確実要素になると我々は考えています。

1 MSCI ワールド指数、2021年11月11日までの累計パフォーマンス、出所:Bloomberg Finance L.P
2 出所:Bloomberg Finance L.P. 2021年11月23日時点。なお、セクターのウエイトが変化したことも寄与しています。
3 出所:Bloomberg Finance L.P. 2021年11月23日時点。
4 米国はコアPCE、ユーロ圏はCPIによるもの。


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ステファン・クロイツカンプ チーフ・インベストメント・オフィサー
ステファン・クロイツカンプ
チーフ・インベストメント・オフィサー
運用部門責任者


“2022年は政治的・経済的な観点から極めて有望な年になり そうです。しかし、高水準の株価バリュエーション、インフレ懸念、 金利上昇、金融刺激策の縮小といった事柄があいまって、市場の ボラティリティが高まるでしょう。“

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