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CIOビュー 2021年6月号

投資家の皆さまへ


景気回復が軌道に-いったん立ち止まる時


経済は新型コロナウイルス感染症にうまく対応していますが、我々は低金利が続くと予測しています。リスク投資に向けた状況はバリュエーション水準の問題さえなければ良好だと言えるでしょう。



もうすぐ夏が来ます。感染者数は減少しており、経済再開に対する期待感が広まっています。欧州と米国の大半の地域で、12カ月前も同じように感じられたものですが、そこには大きな違いがあります。1年前の今頃はまだコロナ禍に対して無邪気な楽観論があり、1年ほどで自然に収束していくだろうと期待されていたものです。しかしそうはなりませんでした。それ以降はウイルスがしぶとく変異しやすいというマイナスのサプライズがあった一方、ワクチン開発のスピードの速さや効果の高さというプラスのサプライズもありました。また、秋や春に感染者数が非常に増加したにもかかわらず、世界経済が粘り強さを見せたこともサプライズでした。しかし、1年前と今の最も大きな違いは資本市場に見て取れます。MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスは2020年3月の底値を85%上回っており、コロナ禍前の2020年2月の高値を20%上回っています。

過去12カ月間の変化の規模やスピードを見ると、今後12カ月間の見通しの策定には謙虚にならざるを得ません。我々はマクロ経済に前向きな見方を持っており、世界の経済成長を2021年は5.8%、2022年は4.6%と見込んでいます。今年の経済成長の主な牽引役はアジアと米国であると予想しています。我々の基本シナリオでは、今年のインフレ率の急上昇は落ち着くと予測しており、国債の急落は避けられるでしょう。しかし、株式と社債のバリュエーション水準には上昇余地がほとんどありません。ただし、これは中央銀行の行動にアクシデント的な要素がなければ、という前提に立っています。インフレや金融市場のバブルの可能性を高めずに経済と労働市場を下支えし続けるのは、一段と難しくなるでしょう。

中央銀行も投資家も同じ課題に直面しています。潜在的な構造変化の度合いを適切に見極める、ということです。コロナ禍に関連した行動の変化に加えて、さまざまな構造変化があるでしょう。強い国家の復活によって減税に終止符が打たれ、ESG投資などに対する規制の新しい波が訪れる可能性があります。また、現在直面しているサプライチェーンの混乱や、国内回帰で製造を確保しておきたいという要望の高まりを受けて、グローバル化が問い直されています。高齢化や米国の手厚い財政支援策を要因とする債務残高の増加もあります。さらに、中央銀行を含め、さまざまな不確実要素も存在しています。今までのところ、中央銀行はいわば危機時の自動操縦モードで動いていましたが、今後の課題の複雑さを考えると、その対応を見通すことも一段と難しくなってきています。

不透明感の高まりは市場には頭の痛い問題です。特にインフレの問題が今後しばらくの間投資家の頭から離れないでしょう。12カ月前にはまだインフレではなくデフレに対する懸念がありました。現在コモディティ価格は史上最高になっており、労働市場はセグメントによっては逼迫して最低賃金が引き上げられ、消費には繰延需要が存在しています。このような現象の一方で、供給側はいまだに混乱しています。我々の基本シナリオでは、これらの要素の大半は一過性のものであり、2022年のインフレ期待はこれ以上高まらないと考えています。ただし、この見方は広く共有されているものではありません。このような状況の中で、我々は株価目標をほんのわずか引き上げました。これは企業業績見通しが引き上げられたことに伴うものです。利益率の圧縮や実質金利の動向がどのようになるか見極めてからバリュエーション水準の調整をしたいと考えています。アジアが引き続き我々の選好地域であり、年初に弱含んだことがまさにその理由でもあります。債券については、引き続き若干の利回り上昇を想定していますが、先進国の大半の国債についてトータルリターンはマイナスだという意味です。社債では、景気回復によって平均を上回る恩恵を受けているハイ・イールドのセグメントを選好します。地域としては引き続きアジアを選好します。

我々は金の上昇余地はほとんどないと考えているため、投資妙味がまだ残っているものは何かという問いが出てきます。2つのテーマが見えてきます。1つ目は、どちらかというと活気に欠ける不動産市場です。我々は構造変化が不動産価格にいまだに十分に反映されていないと考えています。この分野では依然として物流センターやマンションを選好し、一方ではオフィスや小売物件は引き続き難しいと見通しています。あまりにも話題になっているためバブルの様相を呈しているものの、最も期待するトピックとしては、依然としてサステナビリティ(持続可能性)を挙げます。特にESG(環境・社会・ガバナンス)のE(環境)について引き続き大きなモメンタムがあると予測しています。例えば、二酸化炭素回避に関する分野などです。しかしだからといって投資家がこの分野に絞ってポジションを取れるというわけではありません。



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ステファン・クロイツカンプ チーフ・インベストメント・オフィサー
ステファン・クロイツカンプ
チーフ・インベストメント・オフィサー
運用部門責任者


“景気回復の兆しが見えてきたとはいえ、コロナ禍やそれによって加速した構造変化の影響は、まだ予見できません。加えて、今年はインフレ率の急上昇により不安定な状況が続く可能性があります。そのため、我々は慎重な見方をしています。“

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