投資家の皆さまへ
正常化への道のり
資本市場が景気サイクル終盤の典型的な特徴を示す中で、経済の新しいサイクルが始まりつつあります。我々は総じて楽観的です。
全体として、2022年3月までの我々の見通しはかなり強気です。我々は今年の世界経済成長見通しを5.3%に引き上げ、株式は平均して一桁台半ばのリターン余地があると見込んでいます。ただし、この楽観論の高まりそのものが慎重になるべき理由でもあります。我々プロの投資家の間では驚くほど高い水準のコンセンサスがあり、それが市況にも反映されています。プロ投資家の大半が楽観的であるというこのような事態は今までほとんどなく、手元現金がこれほどまで低い水準になったこともほとんどありません。資本市場の強気を示すサインも増えていますが、これはむしろ景気サイクル終盤に典型的なものです。例えば、高い起債水準、IPO案件の多さ、エキゾチック金融商品
1の超過価格などです。
しかし、楽観的になるもっともな理由もあります。新型コロナ対応の前進、景気サイクルの復活、堅調な企業収益、中央銀行による金融支援の継続などです。コロナ禍に関しては、ロックダウンと緩和に関する議論が活発です。ただ、効果の高いワクチンが普及しつつあるため、制御不能であった感染拡大が今年中にも収束へ向かうことが現実味を帯びてくるでしょう。ワクチンによる効果がいまだ限定的であるにもかかわらず、この5週間で世界の新規感染者数は半分になりました。ウイルスが予測不可能であることは理解していますが、感染拡大が急激に深刻化しない限り市場の反応が長引くことはないと予想しています。
経済は全般的に驚くほど安定しています。米国における高水準の財政赤字を伴うものであるとはいえ、経済は力強く、米国とアジアが再び成長のエンジンとなっています。企業収益という点では、テクノロジー株に牽引される形で米国が一歩進んでいます。2020年第4四半期にS&P500種株価指数の構成企業は2019年の同じ期間とほぼ同じ収益を上げました。さらに、我々は中央銀行が金利を低い水準のまま据え置くと予想しています。
景気回復を考慮しても金利を据え置けるかということが今年の市場では重要な問いとなります。米国では10年物の実質金利が2018年以来初めて2月半ばから上昇し始めており、既に先行きに対する懸念となっています。これは特に成長株のバリュエーションにとっては足かせとなり、株式ポートフォリオにおいて景気敏感株へのウェイトを高める議論につながります。コモディティ価格は過去8年の中で最高水準に達しており
2、これも景気の上振れに対する期待を示しています。しかしこのような状況の中では、大いに期待されている米国の景気刺激策は諸刃の剣となる可能性があります。
株式市場は消費や投資を促す効果を歓迎していますが、それと同じ程度に、刺激策によって既に上昇しているインフレ期待や実質利回りが一段と押し上げられるというリスクもあります。しかし、我々の見通しは今年のインフレ率や国債利回りの上昇が一時的なものにとどまるという前提をもとにしています。総じて、我々は今後も低金利環境が継続すると予測しており、これが引き続き株式、社債、アジア債券、一部の不動産市場に対する選好を継続することにつながります。DWSとしては、デジタル化と持続可能性というテーマに引き続き注目していきます。
1 仮想通貨や特別買収目的会社(SPAC)など
2 ブルームバーグ商品指数
※本文の英語サイトは
こちら
※グローバルサイトへ遷移します。
※CIOビュー最新情報TOPはこちら