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2020年6月30日

投資家の皆さまへ


正常に戻る。しかし、「正常」とは何か?


記録的な市場の下落に続いて、記録破りの景気刺激策が講じられ、それが急速な市場の反発につながりました。しかし経済の回復にはまだいたっていません。



新型コロナウイルスとその余波が引き続き人々の生活、経済、株式市場に大きな影響を与えています。以前にウイルス感染の中心地であった欧州大陸で状況が沈静化し、ロックダウンの解除が加速しているものの、ウイルスが引き続き世界中で猛威を振るっているという事実を見過ごすことはできません。特に中南米など新たに感染の中心地となっている地域に加えて、英国および米国において新規感染者数が高止まりしているのも顕著です。それにもかかわらず、これら各国の政府も断固として通常の生活に戻ろうとしています。

米国人の多くは、外出自粛という理由ではなく外出禁止令という理由によって今でも自宅にとどまらざるを得なくなっています。警察の手による暴力でアフリカ系米国人ジョージ・フロイド氏が死亡したことで、米国の多くの都市において何週間にもおよぶ抗議活動に火が付きました。抗議活動やパンデミックに対するトランプ大統領の対応がどのように大統領選に影響するかが、この夏、投資家の念頭に置かれることになるでしょう。

ほとんどの国で4月、または遅くとも5月には経済が底を打ったと我々は想定しています。感染率がさらに高まる国や地域が出てくることがあると予想はしているものの、この春のような世界全体がロックダウンされる事態は再びないと見込んでいます。日常生活が戻りつつあります。最初はそのスピードは速く、その後穏やかになるでしょう。世界の経済生産が2019年後半の水準に戻るのは2022年末となる見込みです。

しかし、「正常に戻る」という言葉は注意して使う必要があります。治療法が進化し、ウイルス対処の経験が蓄積されてきたとは言え、ウイルスは多くの人にとって引き続き脅威であり、当面の間は経済生活や社会生活に多大な影響を与えると考えられます。

経済にとっても「正常に戻る」のは難しいようです。経済の落ち込みの大きさを忘れてはなりません。輸送、自動車販売、観光など様々な分野で80%以上の経済活動の減少が記録されました。その結果、第2四半期の先進国の経済成長率は、史上最大となる前年比マイナス10%以上となる可能性が高いと考えられます。2020年全体の見通しもあまりよくありません。ユーロ圏経済成長率は前年比マイナス7.5%、米国経済成長率はマイナス5.7%になると我々は予測しています。 加えて、特に米国において失業率が前例を見ないほど急激に高まりましたが、これが長期的にはどのように元の水準に戻るかどうかについても不透明です。

他にもマイナス要素があります。今般の危機で保護主義や反グローバル化の動きがいっそう高まりました。プラス要素としては、デジタル化も進行しました。一方で、政府による経済への大規模な介入には大きな問題があります。各国の債務状況が記録的高水準となっていることと合わせて、政府による経済への介入は潜在成長に長期的にマイナスの影響を与えかねないゆがみを作り出す恐れがあります。

中央銀行にとっても、「正常」とは遠い昔の概念のようです。今世紀初頭から、中央銀行が投資家を救済し、資本市場の混乱や経済の落ち込みを迅速に引き受ける意思や力があるという期待が高まってきました。新型コロナウイルス危機を緩和するための記録的な救済策は論理的ではなかったとは言えないでしょう。利下げが実行され、何十億ドルという支援策は何兆ドルという規模に引き上げられ、資産購入の対象となった市場セグメントは広がりました。米連邦準備制度理事会(FRB)のバランスシート合計だけでも、今年は4兆ドルから10兆ドルに拡大する可能性があります。しかしこの結果は複雑なものになりそうです。

このような状況において、資本市場の「正常」とはどのようなものになるのでしょうか? 債券については、危機以前のトレンドが決定的なものになり、国債利回りは大幅な上昇が現在のところ全く見込めず、低い水準に留まっています。そして、「現在のところ」という点を危機以前にも増して強調する必要があります。大規模な財政刺激策や債務の急拡大によって、2019年末と比較すると大幅なインフレ率の上昇がまったく非現実なものではなくなっています。

インフレ連動債券がこのような環境で恩恵を受けることでしょう。銘柄によっては、社債や新興国も再び十分なリターンを期待できると予測されます。我々は特にアジアに投資機会があると見ています。アジアは現段階では他の地域よりも新型コロナウイルスの対応に優れており、引き続き低い原油価格からも恩恵を受けるでしょう。全般的に、コロナ危機が招いた利回りの大幅な上昇を受けて、特にハイ・イールド債のリスクリターン特性が大きく改善したと考えています。

株式のリスクリターン特性はどうでしょうか? MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスで測ると、株式は既に2019年11月の水準で取引されており、ナスダック総合株価指数は年初来を上回っています。1 この点についてもテクノロジー株が好調であることを反映しています。一方で、株式ユニバースでは、新型コロナウイルスによってヘルスケアセクターも注目されるようになりました。相対的に見ると、我々はこの2つのセクターを引き続き選好しています。 しかし、絶対的な観点からは、現在のバリュエーションを正当化することは難しいと言えます。これは市場全体に言えることです。2022年の企業収益が2019年と同じであると想定してそれを現在に割り引いて考えると、例えば、S&P500種株価指数のバリュエーション(株価収益率)は危機以前の水準を上回っています。正常であれば、これは割高であると見なされます。しかし、正常の状態とは何でしょうか? 景気循環は今までになく不透明で、そう遠くない未来に、インフレなのかデフレなのか、何に悩まされることになるのかは不確実です。さらに、中央銀行は急速にバランスシートを拡大し続けています。このような異常な状況において、株式などインフレ抵抗力のある資産が望ましいという結論に達する投資家が増えているようです。中期的には株式のリターンは穏やかではあるものの、デジタル化や自動化の進行、スマートシティ開発といったメガトレンドから利益を上げるセクターもあると我々は予測しています。収益回復の遅れでバリュエーションが試される中、現金の分配も重要な問題になります。コロナ危機を受けて企業が配当できるかどうか多くの投資家が疑問視しており、高配当戦略は苦戦しています。ただし、優れた配当株を選定することで、この混乱をうまく切り抜けることができました。注目すべきなのは、以前も今も、配当の量だけではなく、配当の質であると我々は考えています。つまり、企業が配当に必要なキャッシュフローを生み出せる力があるかどうかということです。ある程度の経済回復が見込める中、選別された景気敏感株にも再び投資妙味が生まれてきました。我々は鉱業株と特定の素材株に注目しています。

株式のリターンは一桁台前半であると予測しています。今後12カ月については、新型コロナウイルス、米中貿易摩擦、反グローバル化、異常な経済トレンド、米国大統領選といった方向性を見通せない要因を踏まえて、特定の債券およびオルタナティブ投資については、金、不動産投資、円などを追加することでさらなる混乱に備えた幅広いポジションを取ったポートフォリオが有効でしょう。

1. リフィニティブ データストリーム、2020年6月4日時点

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ステファン・クロイツカンプ チーフ・インベストメント・オフィサー
ステファン・クロイツカンプ
チーフ・インベストメント・オフィサー


“新型コロナウイルス危機によって各国政府や中央銀行の影響力が高まり、様々な市場メカニズムが停止しました。これは長期的にはリスクとなります。短期的には、投資家は支援策が市場にもたらしたプラス効果を活かすことができるでしょう。“

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