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2020年6月4日

投資家の皆さまへ


2020年、新型コロナウイルスが引き起こした下落と反転


新型コロナウイルスが喫緊の問題です。我々は2020年上半期に景気が急激に減速し、その後は若干反転すると予測しています。



米中間の貿易摩擦、米大統領弾劾の手続き、ブレグジットの議論といった3つの主要リスクシナリオは、現時点では別次元でばかばかしいほど害のないことのようにさえ感じられます。 この数週間激動に見舞われるうちに、このようなリスクはほとんど忘れ去られたかのようです。このような不幸な変化を引き起こしたのはパンデミック(世界的な流行)です。新型コロナウイルスは中国から始まり、驚くほどのスピードで世界に広がっていきました。この感染拡大の全容は2月末まで明らかにはなりませんでした。これは当社の定例のストラテジーミーティングの後のことです。その後たった3週間のうちに新型コロナウイルスが資本市場に引き起こした影響を簡潔に見ていきましょう。

中国以外の国における感染者数はあっという間に中国の感染者の総数を超えました。3月9日には、イタリアは実質的に全土で人の移動の制限を開始しました。世界のいたる所で大規模な文化イベントやスポーツイベントがキャンセルされました。
市場では、S&P500種株価指数は市場最高値から記録的なスピードでほぼ20%も下落し、欧州の指数は時価総額の4分の1以上が消失しました1。株式市場のボラティリティ2は、2008年以来見られなかった水準にまで高まっています。さらに悪いことに、主要な原油生産国であるサウジアラビアとロシアが全面的な価格競争に突入し、原油価格が1バレル20米ドル程度まで下落しました。史上初めて、全ての満期の米国債の利回りが1%を下回り、ユーロ・ハイ・イールド社債のリスクプレミアムは実質的に一晩で2倍になりました。新型コロナウイルスはほとんどの人の日常生活にも影響しています。

DWSにおいても、業務を円滑に進めるために様々な予防措置を講じています。事態がこのように急激に進展したため、我々が2月中旬に出した見通しがもはや現実に即したものではなくなっていることもご理解いただけることでしょう。

3月12日には別の地殻変動が起きました。この日、欧州のほぼ全ての国が危機対応モードに切り替わり、米国も同じような方向性に舵を切る必要があることが明らかになりました。株式市場は歴史的な急落となり、ほとんどの債券市場も身動きのとれない状態になりました。各国中央銀行は大規模な流動性の供給をもって介入し、米連邦準備制度理事会(FRB)もイングランド銀行も大幅な利下げに踏み切りました。ベンチマークとなるイングランド銀行の金利は1689年以来史上最低となる0.1%に引き下げられました。欧州中央銀行(ECB)も、債券市場の流動性改善に向けて、銀行貸出を増やすための様々な緩和策や7,500億ユーロに上る資産購入を打ち出すなど、同様の措置を講じました。現在トレーダーやファンドマネージャーの多くが在宅勤務をしていることも市場における流動性の低下に拍車をかけています。株式や社債などリスクの高い市場が急落に見舞われた日であっても、金や国債といった安全資産も下落しており、このことからも流動性の逼迫が明らかです。「現金が王様」というルールが最も重要な局面で、多くの企業や機関投資家にとって金や国債は流動性を担保するものになっています。

皆さんの目の前で経済生活が崩壊しているのです。広範囲にわたる国境の封鎖によって、ポーランドとドイツの国境ではトラックの渋滞が60kmにも及んでいます。空の交通は全面的に停止しています。店舗、文化施設やスポーツ施設の閉鎖、外出禁止令の導入によって、欧州と米国の都心部から人影が消えました。1月と2月の中国の経済データには経済的な影響の可能性が示されています。設備投資は前年比24.5%落ち込み、小売売上高は20.5%の減少となっています。この数字は、アナリストの予測よりもはるかに悪いものでした。

この状況は驚くほどのスピードで動いています。次のようなレーニンの言葉があります。「数十年何も起きないこともあれば、数週間のうちに数十年分のことが起きることもある」。このような状況に応じて今年の経済成長率の可能性には大きな幅があります。経済成長を主に左右するのは、現在既に講じている感染防止措置がどれぐらいの期間、またどの程度有効であるかということでしょう。これは現時点では予想できるものではありません。急激な経済の落ち込みの二次的または三次的な影響であっても、全容が明らかになるには時間がかかることでしょう。経済がお互いに影響しあっているということもこの不確実さを高めています。例えば、中国では国内の新型コロナウイルスの封じ込めには成功したものの、現在は海外から持ち込まれる感染に苦戦しています。

ただし、依然として、今後のウイルスの拡大や医療システムにかかる負荷が最大の不確実性であることに変わりありません。国ごとの感染拡大のスピードや死亡率の違いを説明するのは難しいかもしれませんが、感染者の対応にあたってきた医師の全てが明確に一致した意見を持っていることがあります。つまり、患者数が現地の医療システムの対応能力を超え、ベッドや人工呼吸器が足りなくなると死亡率が劇的に上昇するということです。

全体として、今後数週間は医療問題が他の何よりも大きな問題となることでしょう。もちろん、小企業や自営業者への安全網を提供し、市場を引き続き適切に機能させるなど、各国の中央銀行や政府が打ち出している支援策も「平常通り」の状態をできる限り保つためには非常に重要なことです。しかし、ウイルスそのものが引き続きどのように展開していくのかということや、各国の政府や機関がどのようにそれに対処していくのかということがそれと同じ程度重要なのです。

我々も答えのない疑問を数多く抱えています。ウイルスやパンデミックにはある程度の予測不可能性がつきものなのでしょう。ただし、このウイルスに過去3カ月にわたって関わってきたことで、我々の判断力は大きく高まったと言えます。まず、パンデミックは一時的な現象であり、少なくとも既に深刻な影響を受けている地域においては、夏の初めまでには最悪期を脱するという我々の予想は変わりません。主要経済地域の新規感染者数は今年前半の早い時期に明らかに安定化し、パンデミックがもたらす経済への最悪の影響は年末までには収束すると思われます。そこに至るためには、次の3つのことが起きる必要があります。第一に、それまでにウイルスの大部分が制圧される必要があります。これには、簡単に使える検査キットが大量に供給されることが必要です。第二に、効果的なワクチンが利用できるようになるよりも前に、症状を抑える医薬品の承認が必要となります。第三に、変則的に聞こえるかもしれませんが、他のウイルス性疾患への対処に馴れてきたのと同じように、社会が新型コロナウイルスへの対処についても馴れていく必要があります。

3月末時点では、欧米における感染拡大は、中国ではなくイタリアの事例をなぞっているように見えます。(ただし、イタリアは様々なマイナス要因3が重なり合ったことで事態がいっそう深刻になっていますが。)これを執筆している時点で、米国での新規感染者数が他の国を上回っており、絶対的な感染者数では米国が世界最大となる可能性が高まっているようです。特に大都市などの米国の一部では、医療システムが既に持ちこたえられなくなっています。都市の封鎖や外出禁止令など、欧州のほとんどの国で取り入れられている手法の効果は、既に新規感染者数に表れています。このような閉鎖や、経済の大部分の「ショック凍結」とでもいうべき状態は6~8週間を超えて維持することはできず、徐々に緩和されていくだろうと考えています。しかし、このような制限の緩和が感染の第二の波をもたらす可能性もあります。このような理由から我々は急速な回復ではなく問題の長期化を見込んでいるのです。

上記のような観点から、次のような結論を導くことができます。我々は短期間のグローバルの景気後退を予測しています。米国およびユーロ圏では、今年の経済は約4%落ち込むと予測していますが、中国では若干の成長が見込めるでしょう。
既に我々が予測していた措置の大部分を中央銀行が講じており、この措置によって資産価格(および経済活動)は引き続き下支えされ、場合によっては下支え以上の効果を生み出すでしょう。

先進国のほぼ全てにおいて主要金利はほぼゼロになっており、様々な流動性供給策が発表されています。債券購入もその一環です。ECBは7,500億ユーロの追加資産購入を発表し、3月23日にはFRBが社債を含めて必要な限りの債券を購入することを発表しました。我々はこれにあわせて債券利回りの予測を修正しました。10年物米国債の12ケ月の利回りは0.9%、10年物ドイツ国債の利回りはマイナス0.5%という予測となります。しかし、現在の財政政策や中央銀行の金融政策の規模を考えると、このような政策がインフレや金利に及ぼす長期にわたる潜在的な影響に取り組む必要がすぐにでも出てくることでしょう。

株式については、2020年は前半に非常に弱含み、その後、年後半には安定すると見ており、2020年通年では企業収益は20%下落すると予測しています。2021年の株価の回復によって、その後12カ月間は若干良い数字となるでしょう。具体的な株価予測には現時点ではあまり主眼を置いていません。我々の中核的なシナリオでは、ほぼ全ての株価指数が今後12カ月で現在よりも大幅に上昇すると考えています。ただし、そこに至るまでに史上最安値の更新があるという可能性は捨てきれていません。大規模な金融・財政政策が株式市場においてはほぼ蒸発してしまった状況では、感染の封じ込めや治療の前進などのコロナウイルス関連のニュースと、株式のバリュエーションの2つが投資家の主要なパラメーターになると考えています。例えば、DAX指数はほぼ簿価(8200ポイント)近辺で取引されており、我々としてはこれ以上の下落リスクはほとんどないと見ています。一方で、S&P500種株価指数の株価純資産倍率は2.75です。S&P500種株価指数には構造的な優位性があるとは言え、DAX指数よりもさらなる下落の余地があると結論づけることができるでしょう。全体としてみれば、現時点では今後12カ月について特定地域の株式市場に対する選好はありません。セクターのレベルでは、今般の危機で必然的に長期的な負け組となるのは観光、航空会社、原油セクター、金融セクターの一部でしょう。勝ち組はもともと我々が選好していたセクターです。テクノロジー、通信、ヘルスケアのセクターで、利益率が高く強固なバランスシートを持った銘柄です。

2021年とそれ以降に向けて、市場を形成する他の要因は何でしょうか? 中道派と見なされているジョー・バイデン氏が民主党候補としてトランプ大統領の対立候補となることがほぼ確実です。投資家にとっては、指名候補の最大のライバルであるバーニー・サンダース氏よりもバイデン氏のほうが心強い候補者となります。トランプ大統領はサンダース氏との対決のほうが望ましいでしょう。ただ現在のところ、トランプ大統領には別の心配事があるでしょう。つまり、株式市場の下落、不況の始まり、コロナウイルス危機への気まぐれな対応などによって、トランプ大統領は票を失っています。他の国においても、コロナウイルスの対応如何によって政権を担うリーダーは難しい局面に見舞われています。この点を別にしても、ウイルス対応の金融政策は全世界の政治家、そして資本市場にとって、依然として重要な問題として残るでしょう。

インフレや金利がほぼ間違いなく資本市場の主な関心事であることに変わりないでしょう。2020年の金融政策は依然として緩和的なままであると予測していましたが、金利はさらに下がりました。米国も当面は低金利という世界で身動きが取れなくなりそうなことからも、我々の前提が変わった部分もあれば、強められた部分もあります。米国債の中にはインフレを埋め合わせられなくなっているものもありますが、こういった米国債そのものに加えて、米ドルも基本的な魅力を失いつつあります。現在の米ドル高は資本市場における緊急対応の副作用であると言えます。同時に、「これ以外にない」という考え方が重みを増しているのです。国債利回りがあまりにも低く、時にはマイナス金利のこともあるため、投資家は社債や株に投資せざるを得ないのです。低金利環境から恩恵を受ける他の投資として、不動産とインフラがあると我々は考えています。2009年以降のインフレは目につかないものでしたが、この状態が続くのかどうかも市場の大きな疑問点です。ただし究極的には強いインフレはまたしても株式にとっては追い風となるでしょう。

結論として、我々は戦後最も深刻な経済の停滞と資本市場の反転に直面しているのです。引き起こされた損害や生み出されたひずみが今後数カ月にわたってますます明らかになっていくことでしょう。パンデミックそのものは、状況が好転する前にほとんどの国で今よりもはるかに深刻になる可能性が高いと言えます。ウイルスは気付かないうちに拡大しており、余りにも長い間先進国はウイルスを過小評価していました。しかし、危機に直面した時に人間が発揮できる適応能力や創意工夫については過小評価すべきではありません。投資家としてであっても、黙って現実を受け入れる時ではないのです。市場は当面の間大きく変動するでしょう。金などの安全性の高い資産や手元現金を増やすことは妥当なことのようです。ただし、機会に対して完全に目をつむってしまうべきではありません。ウイルスについてネガティブな報道が今後も出てくると予測していますが、時間の経過と共により前向きなニュースも出てくると考えています。資本市場が今後の展開を織り込んでいく中で、現場の状況がまだ悪化しているように見える時でも、市場は前に進んでいくと我々は見込んでいます。我々の中核シナリオが完全に間違っていない限り、今後12カ月のうちの株価が全面的に上昇するでしょう。ただ、現在のような状況ではこのような考えは二の次のようにも感じられます。どうか皆様も健康を保ち、ご自身と周りの方を大切にしてください。

1. 3月24日までにほぼ全ての主要株価指数が高値から平均して3分の1下落しました。
2. 例えば、S&P500種株価指数およびユーロ・ストックス50のVIX指数でボラティリティが分かります。
3 集中治療室や人工呼吸器の数が少ないこと、高齢化が進んでいること、大気汚染が欧州の中でも最悪なことなど。


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ステファン・クロイツカンプ チーフ・インベストメント・オフィサー
ステファン・クロイツカンプ
チーフ・インベストメント・オフィサー


“新型コロナウイルスが引き起こす景気減速は、これまでに類を見ないものになることでしょう。とはいうものの、我々はこの感染の流行が引き起こす不況は一時的なものであると見込んでいます。我々が確実に分散されたポートフォリオへの投資を選好することに変わりありません。“

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