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2019年12月18日

投資家の皆さまへ


2020年は良い年に、しかしその後10年はうまくいかないかもしれない


2020年の投資見通しは悪くありません。しかし、次の10年は今までの10年のようにはいかないでしょう。



新年の始まりは2020年代の始まりでもあります。2020年代は新たな不確実さと課題をもたらすことでしょう。確実に言えることは、テクノロジー、経済、そしておそらく政治についても、変化のスピードが早まることです。テクノロジーは、働き方を変えるだけではなく、追加的に多くの規制が変更されるという点からも、われわれの業界の変化を促す大きな要因となると考えています。当社の中核事業である、責任投資ビジネスは、低インフレ、量的緩和、低い債券利回り、資産価格の上昇といった要因で2010年代は厳しい環境に置かれました。今後10年で世界中の国々と様々な地域にどのような成長の可能性があるのか、金利、インフレ、市場がどこに向かうのか、そして世界が社会政治的にどこに向かっているのかといった事柄について、我々は自分自身に問いかける必要があります。

不確実性は高く、過去10年間に金融資産に恩恵をもたらした状況が今後も続くことはないだろうという見通しを我々は明確に打ち出したいと考えています。これからの10年間は、過去10年のような良いリターンは得られないだろうと予測しています。

ただし、「CIOビュー クオータリー」は今後1~2年のみに着目しています。「のみ」という言葉を使ったものの、この比較的短期間の予測は簡単であると言うつもりはありません。

この1年は投資家にとって最高の年となりそうです。この点については予測していたことではありません。ただし、ブレグジット、米中貿易摩擦、米国企業収益がどのように展開するかといった我々の懸念は正しいものでした。実際、企業収益は予想よりも悪化しつつあるようです。年末までに2019年の前年比成長率がゼロとなる可能性もあり、2020年の企業収益予測のコンセンサスは今もってさらに下方修正されています。よって、S&P500が年初来25%近く上昇したのには、次に挙げる3つの特別な理由があると言えます:

1.8月の逆イールド(2年物および10年物米国債の間で)によって起こった景気後退に対する懸念は、秋には落ち着きをみせました。
2.政治に対する不安も年末に向けて若干緩和されつつあります。無秩序なブレグジットのリスクが後退し、米中貿易摩擦が少なくともこれ以上悪化しない様相を見せているためです。
3.しかし、最も決定的な要因は、米連邦準備制度理事会(FRB)が驚くほど緩和的になったことではないでしょうか。FRBは追加利上げを控えただけに留まらず、利下げにまで踏み切ったのです。また、3月には9月以降にさらなる資産縮小をしないことを発表し、9月に起きたレポ市場の急騰を受けて、新たに何十億米ドルという資金供給にまで踏み切りました。欧州中央銀行(ECB)など他の中央銀行も一層の緩和政策を取りました。

ですから、今年は疑念が的中したと皮肉る人もいることでしょう。つまり、債務過多の世界はこれ以上高い金利を取ることができず、中央銀行が再び存在感を示し、世界経済を救い出すことを待ち望んでおり、喜んでそれを行うだろう、さもなければ資本市場は動揺し始めるであろうと。
強い米ドルと非常に低い米国債利回りを考えると、他の皮肉も当たっているように見えます。米国は自国の財力を超えて生き永らえられ、好きなだけ債務を積み上げることができる、という皮肉です。つまり、米国は債務を支払うのに必要なお金をいつでも印刷できるため、債務を払いきれなくても問題ない、ということです。このような議論は短期的には有効かもしれませんが、長期的には疑問符がつくものです。米政権が現在のような保護主義的な政策を取り多国間協定から決別しようとしていることを考えると、米ドルと米国債が無敵だという信頼もいっそう疑わしく感じられます。しかし、外交政策の劣化や財政と貿易の双子の赤字をうけてドルが弱くなる時期を予想することは、何年にもわたる金融緩和政策によってインフレが起きる時期を予測するのと同じぐらい難しい芸当です。どちらも実際に起きるまでには相当の時間がかかりそうですから、歴史がその正しさを証明するまでは、それらの予測は意味のないことに映るでしょう。

我々は2020年に米ドルの下落もインフレ率の急騰も予測していません。むしろ、中央銀行は同じ音楽を奏で続け、投資家は金融緩和というワルツを踊り続けることになるでしょう。しかし音楽のテンポは今までほど早くないかもしれません。我々は、市場は2019年ほどよくならないと見ています。つまるところ、投資家はあまりにも長い間同じ曲を踊り続けてきたため、食傷気味になっているのです。

投資家に踊り続けてもらうためには、金融緩和の後に世界経済の成長という次の曲が必要です。我々は、2020年の経済成長を2019年と同じレベルの3.1%と予測しています。しかし、今後12カ月のリターンについては一桁台を見込んでおり、これはちょうど1年前に2019年について予測したのと同様のレベルです。しかしそれ以来、企業収益が横ばいであったにも関わらず株価は二桁の伸びを示し、株の割高感が高まっています。また、中央銀行が2020年にも今までと同じポジティブ・サプライズを打ち出すという可能性は低いでしょう。

一方で政治的な様相は変化しつつあり、この変化はおそらくあまり良い方向ではありません。米中の貿易摩擦はこれ以上の悪化はないにしても、真の意味での前進はありませんでした。香港における抗議活動の激化も複雑さに拍車をかけています。また英国の選挙がどちらに傾いても、ブレグジットとその結果は2020年を通して話題として残ります。大西洋両岸のこのような不確実さの結果として、企業が投資計画を先延ばしにする傾向が強まることになります。米国が財政パッケージを導入して穴埋めするとは考えられません。ドイツがこの投資ギャップを埋めるということももちろん考えられませんし、全体的な経済成長が6%以下に落ち込むと予測されている中国もその役割を果たさないでしょう。

アジアが引き続き世界の成長エンジンであり、株式と債券の双方について当社が来年も選好する地域の一つとなります。債券利回りを求めて投資家は再び新興国債券と社債に深くのめり込むことになります。ユーロ圏においては、価格に対して鈍感な買い手であるECBが市場に戻り、絶えず需要を押し上げるでしょう。

リスクが引き続き高い水準に留まることから、我々は2020年のポートフォリオに長期の米国債や金を使うなどのヘッジを取り入れます。個別ポートフォリオの戦略的アセットアロケーションに関わらず、我々は2020年の投資を環境・社会・ガバナンス(ESG)基準にいっそう沿ったものにしていきます。ESGに対して我々は早い段階から注目してきましたが、2019年には環境問題が世界のニュースの中心となる中でこのような我々の姿勢が報われることとなりました。リターンを「どのように」生み出すかということを無視することはできません。今後も「どのように」にという点に留意してESGの取り組みを拡大してまいります。

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ステファン・クロイツカンプ チーフ・インベストメント・オフィサー
ステファン・クロイツカンプ
チーフ・インベストメント・オフィサー


“景気や市場が落ち込むとは見込んでいませんが、そのような可能性を全て排除することはできません。ですから、慎重ながらも楽観的な姿勢で新しい年を迎えたいと考えます。“

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