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2019年10月16日

投資家の皆さまへ


これまでとは異なる景気サイクル


現時点では経済は順調に見えますが、今後の見通しはそれほどでもありません。 ただし、これまでとは異なる景気サイクルの中で特に目新しい考えではないと言えるでしょう。 我々は引き続き警戒が必要と考えます。



市場の地合いは素晴らしいものがあり、これには理由があります。米国と一部欧州の労働市場は非常に強く、現時点に限って言えば企業業績も堅調です。企業のバランスシートは健全で、債務の不履行も引き続き低水準です。原油価格は適正で、利上げリスクもありません。加えて、ドナルド・トランプ米国大統領はいつでも誰にでも意見します。大統領が良かれと思った提案をありがたいと思う人は多くはありませんが…。1 投資家はこれ以上何を望めるというのでしょうか?いくつか思い浮かぶことがあります。まずは、目の前で様々な警告ランプが灯っていることを懸念すべきです。

一番まぶしい警告ランプは米国のイールドカーブの逆転です。過去に起きた逆イールドは景気後退の前触れとなることが通例でした。米連邦準備制度理事会(FRB)は明らかに神経質になっており、「予防的利下げ」という先制手段を既に取ったほどです。一方、欧州においては、欧州中央銀行(ECB)がおそらく9月に全く新しい金融政策のパッケージを打ち出すことが見込まれており、財政刺激策を求める声も一巡しています。他にも懸念材料はあります。世界の製造業はあたかもエンジンが止まる前のようなガタつきを見せています。よって、経済全体で見ると堅調であるとは言えないのです。米国大統領はFRBに金利引き下げの圧力をかける一方で、同時に米国経済の拡大について誇らしげなメッセージを発していますが2、現在の経済状況はこれと同程度に理解が困難なものです。

順調な経済と計測器に灯る警告ランプを両睨みしながら苦労しているのは米国大統領だけではありません。投資家の多くもつい最近大きな間違いを犯してしまい、これが投資家にとって問題をよりいっそう複雑にしています。過去に警告サインであったものに注意して株式市場から足早に立ち去った人たちは損をしました。2009年以降の株価調整局面は、後から振り返ってみると長期的な株価上昇における一時的な中断だったためです。そのため、景気後退について断言したり、強気相場は終わったと述べたりすることには今は誰もが慎重になっています。しかし、強気な投資家でさえも、景気後退の可能性が全くないとは言い切れないのです。3

堅調な経済と不安なムードによって生み出された憂慮すべきギャップが形となって表れたのがイールドカーブです。8月には、2007年以来はじめて10年物米国債利回りが2年物米国債利回りを下回りました。1957年以来、米国では逆イールドは9回発生し、これらは2年以内に景気後退が始まる先触れとなりました。しかしながら、このような過去の事象を額面通り受け取って、米国の景気後退が迫っていると結論付けるには慎重になる必要があると考えます。前回までの逆イールドは、経済、政治、金利政策、テクニカル要因、人口動態といったものが引き金となっており、逆イールドが発生したそれぞれの時点においてその要因は全て異っています。現在の逆イールドは殊の外、特異な状況を反映しています。

1.中央銀行が量的緩和やマイナス金利といった異例の金融政策を取り続けているため、金融市場にゆがみが生じています。その結果、現在、全世界で16兆米ドル以上の債券がマイナス利回りになっています。これは米国外の投資適格債券残高の半分にも上ります。これが明らかに米国長期金利の下押し圧力となり、それによってイールドカーブによる将来の予見性が影響を受けている可能性があります。

2.米中世界二大経済間の貿易摩擦が膠着しており、終結の兆しはありません。

3.貿易摩擦は世界に波及効果をもたらしています。中国が国内の景気刺激策に目を向けるようになる中で、オーストラリアなどの原材料輸出国、欧州の機械産業、米国の携帯電話会社などに影響が出ています。

さらに懸念すべきは、特に米国をはじめとする多くの国において、無謀なほどに国家債務が積み上がっていること、さらには、保護主義的な経済政策を取ろうとしているポピュリスト政権が台頭していることです。経済が厳しくなった時にこのような政権がどのように反応するか予断を許しません。

中期的に心配すべき理由は数多くあるものの、我々は危機が差し迫っていると言うには時期尚早であると考えます。余りあるほど前向きなデータがあり、それは現時点で既に史上最長となっている株価上昇を裏付けるものでもあります。一つの要因はおそらくサービス業の成長でしょう。サービス業は製造業ほど在庫や投資サイクルの負担が大きくありません。また、労働市場が堅調なことから、消費者は多大な消費を続けています。さらに、現在経済が若干鈍化しつつあることで、過熱リスクが軽減され、中央銀行が再び金融緩和に踏み切ることになったのです。

何を投資対象として選好するかについて、この状況はジレンマです。リスク資産に立ち戻ることが一見魅力的に映ります。来年までに世界経済の成長がさらに鈍化するとは見込んでいないことからも、なおさらそう言えます。しかし、欧州における名目のマイナス金利、米国における実質のマイナス金利、逆イールドカーブといった債券市場からの懸念すべきサインを全く無視してしまうわけにもいかないのです。

つまり、引き続き警戒を緩めないということです。株式のリターンは一桁前半を見込んでおり、配当収入がリターンの源泉になるでしょう。地域的な選好はあまりありません。中期的には過去10年同様、米国株式が引き続き世界の各地域の株式を上回るでしょう。しかしバリュエーションの高さや楽観的な業績予測から、米国株式は景気後退の影響を受けやすいでしょう。他の選択肢が不確かだという理由だけで株式に集中することが賢いやり方だとは考えていません。中央銀行からの前向きなサプライズが期待できない状況においては、幅広いマクロ経済のデータの改善がなければ、再び株価が上昇することはないと見ています。

債券については、前四半期から目標利回りを引き下げました。さらなる利回り低下の可能性も排除しません。ただし、今後12カ月で金利は若干上昇すると見通しています。現時点では、債券投資家にはほとんど選択肢はなく、許容できるリスクを取ってプラス利回りの取れる資産に投資するほかありません。我々の見方では、投資適格社債と米国長期債がそのような対象 となります。特定の新興国債券についても選好します。

これだけの政治リスクがあるにもかかわらず、現時点で為替の大きな不均衡は見られません。よって、12カ月先の目標を1ユーロ=1.15米ドルに据え置きます。投資家のリスク回避が強まれば、安全通貨とみなされている円が値上がりすると予測しています。我々はブレグジットの合意なき離脱が回避できるというメインシナリオを描いていますが、そうなれば英ポンドも値上がりする可能性があります。原油については横ばいとなるでしょう。金については、力強さという点では劣るものの直近の上昇が継続する可能性があります。

我々の今後12カ月の見通しにつきましては、「DWSの見通し」をご覧ください。


1. 8月に、メッテ・フレデリクセン・デンマーク首相は、トランプ米大統領のグリーンランド購入の申し入れを拒否しました。ジェローム・パウエルFRB議長も一貫してトランプ 米大統領の利下げ圧力に完全には従っていません。
2. 8月14日、23日、24日の米国経済について触れたツイッター投稿をご覧ください。また、8月3日、7日、8日、14日、15日、19日、21日、23日、27日、28日のFRBに関する ツイッター投稿もご覧ください。
3. ここでの景気後退とは、2四半期連続でマイナスになるというテクニカルな意味ではなく、失業者数の高止まりと設備稼働率の低迷が長期的に続くことを意味しています。
ステファン・クロイツカンプ チーフ・インベストメント・オフィサー
ステファン・クロイツカンプ
チーフ・インベストメント・オフィサー


“先行指標の多くが暗い見通しを示す中で、サービス業と個人消費は引き続き堅調です。債券市場が示すサインは厄介なもので、政治リスクも高まっているように見えます。我々は引き続きリスクを注視します。“

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