2023/03/22 CIO View Quarterly New

一歩一歩、不確かな方向へ

私たちは、今年が投資にあたり悪い年になるとは思っていません。しかし、とりわけ重要な金利とインフレの動向が、引き続きサプライズをもたらす可能性があります。

この記事は約4分で読めます。

“経済的にも金融市場においても、程々の一年になると予想しています。それは主なリスクの1つが発生しなくても、です。しかし、上向きになる"リスクポテンシャル"もあります。困難な状況に見舞われた2022年における企業の適応力については、今でも驚いています。“

Björn Jesch

グローバル・チーフ・インベストメント・オフィサー

現在の私たちの市場予想通りになれば、12ヵ月後にハッピーになれる可能性は十分にあります。とはいえ、かなり慎重な見方をしています。株式の場合、一桁台前半のリターンは、ほとんど配当によって見込まれるものです。債券については、過去数年よりも高いリターンが期待できますが、主要金利やリスクプレミアムがさらに上昇すれば、これら がリターンを圧迫する要因となる可能性があります。

こうした予測は、当社のコアシナリオに基づいています。しかし、この予測の根拠は、資本市場のさまざまな部分におけるバリュエーションが示唆するものよりは信頼性に欠けます。 今年最初の2 ヵ月の動向は、マクロ経済の基盤が現在いかに揺らいでいるかを色濃く示しています。1月には、投資家はポジティブなものしか見えないと信じていました。例えば、予想以上に好調な米国経済や、インフレ懸念の後退などです。しかし、2月に入り、発表された経済指標の一部が下方修正されたこともあり、流れは一変しました。

このことは、コロナによって、いくつかのデータ系列にいかに乱れが生じたかを思い起こさせます。このままでは、あと数四半期は間違ったシグナルを送ることになりかねません。 いずれにせよ、現時点で私たちはほとんど想定していませんが、スタグフレーションという言葉はすぐに世間に広まりました。2月に入ってから、米国のインフレ期待 [1]は1ポイント以上も上昇し、足元で 3.4%となっています。私たちは、インフレ率と中央銀行の政策金利について、さらなるサプライズが生じる可能性があると考えています。1)現在のような水準のインフレ率は 1980年代に見られたものであること[2]。2)より引き締め的な金融政策にもかかわらず、労働市場は依然として堅調であり、また資金調達環境は依然として良好で、金融市場にはリアルなストレスがない状況であること。金利とインフレ率の上昇にもかかわらず、特に米国における消費者の購買意欲は引き続き非常 に旺盛であること[3]。3)金融政策が機能するまでには数四半期というタイムラグがあり、中央銀行が過剰に反応する可能性があること。これらの問題に加えて、資本市場の反応を予測するのも難しい状況です。

インフレとの戦いが長期化する危険性を心配する前に、マーケットはどれくらいの期間、緩和的な金融政策を祝うのでしょうか?その逆はもっと複雑で、2024年までにインフレがほぼ抑制されるという確信が高まれば、金融引き締めに対するマーケットの怯えはどの程度になるのでしょうか?そして、この緩みは再び中央銀行の努力(上記 2)の後半の文章をご参照ください)を打ち消すことにならないでしょうか?

中央銀行が言うところの「データ次第」という環境では、中央銀行だけでなく投資家も次々に発表されるマクロデータ次第で行動を変える必要があることを説明するために、私はこれらの考察に多くの労力を割いています。その結果、最終的に導き出した予想は以下の通りです。


・経済成長/景気後退:景気は概して懸念されていたよりも好調に推移していますが、絶対値ベースではまだ弱い状態です。米国では、年内に穏やかな景気後退が続くと予想され、ユーロ圏は辛うじてそれを免れるとみています。その後の回復も緩やかなものになりそうです(2024年は両地域とも 1.1%)。一方、中国では、2023年と2024年の GDP成長率が5%を超えると予想しています。

・インフレと中央銀行:中央銀行は、インフレを抑制するためにほぼすべての手段を講じると思われます。現在、コアインフレ率の低下が予想よりも遅れていますが、2024年末にはユーロ圏と米国のインフレ率が 3%を下回ると見ています。しかし、これまでの利上げによって一部の分野(企業や住宅建設業者の信用需要、臨時雇用、M1マネーの増加)で活動鈍化の最初の兆候が見られることも事実です。第 2四半期に、FF金利は5.5%、ECB預金金利は4%でピークを迎えると予想しています。日本銀行は、イールドカーブ・コントロールの段階的な終了と、それに続く 2回の小幅で象徴的な利上げを行うと予想しています。

・債券:国債利回りはまだピークに達していないと見ており、12ヵ月後の米 10年債利回りを4.3%、独10年債利回りを2.9%と予想しています。米国の2年債のみ利回りが低下すると見ており(目標:4.4%)、これがこのセグメントを選好している理由です。社債と新興国債券のリスクプレミアムは拡大する可能性がありますが、足元の高い利回りが、特に企業の良好なバランスシートを鑑みれば、ある程度のリスクバッファーとなるでしょう。為替については、ユーロと円が米ドルに対して若干上昇すると予想しています。

・株式:先進国では高金利環境の下、収益は停滞している一方で利益率は依然として高いという状況であり、世界株式はほとんど上昇余地がないと見ています。当社の12ヵ月後のターゲットは、米国 S&P500種株価指数が4,100、ドイツ DAX指数が16,300、欧州ストックス・ヨーロッパ600指数が480です。欧州の小型株、アジア、コミュニケーション・サービスセクターがアウトパフォームすると考えています。

・オルタナティブ:12ヵ月後のブレント原油は 1バレル100米ドル、金は 1オンス 1940米ドルと予想しています。

原題:Step by step, uncertain direction

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1. 2年物米物価連動国債のブレーク・イーブン・インフレ率をベースにしています。

2. 米国での数字に基づく。1980年当時、公的債務は GDPの 40%に過ぎなかったが、現在では 3倍になっている。

3. しかしながら現在、その傾向に亀裂が入る兆候があります。

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